駄メンズになっちゃう【WT短編】

■ 彼女なつよつよお姉さん / sha ページ33

｢こっち座って？｣

そう言いながら､ソファの隣をぽんぽんと叩き
俺が座るように促される
ん？と思いながら手に持ったオレンジジュースをテーブルに置き
隣にストンと腰掛ければ､頭をわしゃわしゃと乱雑に撫でられた

｢はっ？なに急に？｣

｢んー､シャケ最近疲れてるでしょ｣

ボサボサになった髪を整える様に優しく撫でながら
少し小さめのトーンでポツリとこぼす

｢撮影多かったし､夜も企画会議で遅くまで通話繋いで
最近寝れてないの知ってるよ､目元も真っ黒｣

指の腹でスリスリと隈を優しく擦られる
ああ､そういえば最近あまり寝れてなかったなと思い当たる
疲れてると感じていなかったせいか､気付かなかった

｢まあ､寝れてない。けど､疲れてないけどね｣

｢シャケは忙しいのが当たり前になってるんだよ
だから､今日はゆっくりして欲しいのー｣

隣に座っていた体温が少し離れたと思ったら
体が傾きぽすりと膝の上に転がされた
そのまま､目元に暖かい手が被せられ視界が真っ黒になる

｢いい？今から大きく深呼吸して､体だらーんとさせてね｣

そう囁くような優しい声､言われた通りにゆっくり吐息を吸い込み吐き出す
そのタイミングに合わせて胸元をポンポンと優しく叩かれた
首元と目元からくる優しい暖かさと､遠くに聞こえる心音で
眠くなかった筈なのにうつらうつらと眠気がやってきた
トントンとリズム良く叩かれるのが心地よくて知らぬ間に寝落ちてしまった

次に目が覚めた時には部屋の中にいい香りが漂っていた
ハッとして体を起こせば頭の辺りには見慣れた枕
そこに彼女の姿はなく､ソファから体を起こせば
キッチンに居るのが見て取れる

寝起きでポヤポヤとする頭を動かし彼女の元に向かい
後ろから体を預けるようにぎゅっと抱き締めた

｢おはよ､シャケ｣

｢んーー､はよ｣

｢どう？少しは体楽になった？｣

言われてみれば､重かった体が軽い
寝起きでポヤポヤとしていた頭も
覚醒し始めれば寝る前よりもスッキリとしていた

自覚が無かっただけで､体は限界だったのだろう
久々に体が軽いのを実感して思わず､おお…と感銘の声をこぼせば
クスクスと前から笑い声

｢ね？疲れてたでしょ？｣

どうやら俺の彼女は自分以上に俺の体調を把握しているらしい
これは､彼氏として負けているのではなんて
頭の隅で思いながらも､今日はこのまま甘やかして貰おうと
首筋に擦り寄るように頭を寄せた

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