駄メンズになっちゃう【WT短編】

■ 本屋のつよつよお姉さん / nasm ページ16

完全オフの休日､俺は足を伸ばし神保町へと来ていた
この街と言えば､本の街。右も左も新しい店から古い店まで軒並み本屋だ
新刊は言わずもがな既に廃番になってしまった
古書まで見つかるかもしれないお宝の眠る可能性を秘めている
俺の様な本好きには1日居ても堪らない空間なのだ

手始めに､近くの本屋の扉をくぐる
ふわりと鼻に付くインクと紙の匂い､所々で聞こえる立ち読みのペラペラと本をめくる音､本が駄目にならない様に調整された空調
目を疲れさせないオレンジの光､全てが読書家としての俺の心を擽る
狭い本棚を潜り抜けるように歩きながらお目当ての題目を探す
本棚に目を取られていたらポンっと後ろから肩を叩かれる
集中していた事もあり､小さく息を飲み体を大袈裟にビクつかせた後
後ろを振り返れば､見慣れた甘栗色の髪の友人Nakamuがそこに居た

｢スマイルも本探し？｣

｢おまっ…､もっと普通に声掛けろよ……｣

｢集中してて呼んだのに気付かなかったじゃん｣

｢マ？いや､悪い。捜し物してて。Nakamuもなんか買いに来たのか？｣

他の人の迷惑にならない様､コソコソと小さな声でやり取りを交わす
どうやらNakamuも気になる本があるらしく態々ここまで訪れたらしい
じゃあ､手分けして探そうとお互いの欲しい題名と作者を交換し合い
左右に別れてじっくりと本棚に目を通す。ここの店舗は大きくは無いものの天高く伸びる本棚に所狭しと詰まっている本から1冊を探すのは
かなりのお宝探しだ。15分棚と睨めっこをした辺りで目に疲労が出てくる
もう諦めて聞こう､とレジカウンターまで歩を進めれば同じように眉間をグリグリと刺激するNakamuの姿。考える事は同じか…

｢あの､すみません
本を探してて､どこら辺にあるかだけ聞きたいのですが
森さんのすべてが…と宮部さんの火…なんですけど…｣

｢ああ､それでしたら森さんのは入口入ってすぐ上から七段目
左からー､確か13番目あたりにございます。
宮部さんのはすみません､先日売れてしまい当店に在庫が無いんです
確か､四件隣の日書房さんで取扱がある筈なのでそちらに｣

突然､図書館の検索端末みたいに話し出して驚愕した
ここはただでさえ本の量が多いのに把握してるのか？全てを？
しかも､他店の情報まで持ってる…何だこの店員…
Nakamuもポカンとした顔のままお礼を言い､じゃあ俺日書房？に行ってくるねと店を出ていった。俺もお目当ての本棚を言われた通り探せば
本当に13番目に本が納まっていて2度驚いた

■ 先輩なつよつよお姉さん / shakr→←■ 対戦つよつよお姉さん / kr

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す