押してダメなら押してみろ。〈黄〉 (ページ32)

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story 32 ページ32

junta side

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「A、行くで」

『じゅ、淳太先輩？！』

店の中に入ると、何かの会計を済ませて

小さい紙袋を受け取っていたA。

ちゃっかり何か買わされとるし。

その細い腕を掴んで

少し強引に出口の方へと向かった。

緑「ちょ、急に何なんですか」

どこまで着いて来んねん、こいつは。

黄「腹立つねん」

緑「は？」

黄「デート中に他の男の所行かれたら、誰だって腹立つやろ？」

緑「デートって、先輩はAちゃんの彼氏じゃないんですよね？」

『あの、お二人共…』

黄「彼氏じゃないのは君も一緒やろ」

『あの！！！！』

急に叫び出したかと思えば

耳まで真っ赤になったAが

俺と智洋くんを交互に睨みつけてる。

『ここで言い争うのは、その…恥ずかしいので、やめて頂けると嬉しいです…』

黄「あ、」

そう言えばここ、デパートやった。

緑「ごめんな、Aちゃん」

『大丈夫です！アクセサリー選ぶの手伝ってくれてありがとうございました』

緑「いえいえ」

『行きましょうか、淳太先輩』

黄「え、あ、はい」

妙に爽やかな笑顔を智洋くんに返したAは

思いの外さっさとその場から離れて行った。

これは、もしや、怒ってる…？

「なあ、A」

『何でしょうか』

「もしかして、機嫌悪い？」

流石に彼氏面し過ぎたかな。

色々展開が急過ぎた気がするし、

『映画館着きましたよ、何見ますか？』

「え、」

何事も無かったように振る舞うAの姿から

この話題を振るのは暫く辞めておこう

と察した。

『私ポップコーンとか買ってくるので、先輩はチケット取っといてください』

「ん、わかった」

『飲み物、何がいいですか？』

「コーヒー、ブラックでええよ」

『了解です！』

結局見ることになったのは

コテコテの恋愛もの、ではなく

海外の有名なアクションシリーズ。

Aが見たい！って言うたからこれにしたけど

よく考えてみれば男子高校生みたいな好みやな。

席は俺がチョイスした後ろの方のど真ん中の席。

周りに人は座ってないし

結構伸び伸び見れそうやからええやろ。

『ポップコーンと飲み物、調達完了です！』

「お、ありがとう」

『早く行かないと始まっちゃいますよ！』

「あんまり急いだらポップコーン零すで」

何か、やっとデートらしくなってきたかも。

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