押してダメなら押してみろ。〈黄〉 (ページ29)

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story 29 ページ29

junta side

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「機嫌が悪いって言うか、モヤモヤしてる」

『モヤモヤ…？』

Aの頭にハテナが浮かんでる。

まあそうやんな、俺も分かってへんし。

「…Aはさ、俺のことが好きなんやろ？」

『はい、淳太先輩が一番です！』

「その割には、他の奴とも距離近いよな」

自分が嫌な言い方をしてんのは分かってる。

でも俺はこの伝え方しか知らへんから

遠回しにもせず、直接聞いてしまうねん。

「ごめんな、『そ、それって！！』

突然いつもの大声を出して、俺の話を遮るA。

今めっちゃ耳潰れそうやった。

「びっくりした…何やねん、」

『それって、嫉妬ですか…？』

「嫉妬？」

『ヤキモチですよ！！私が他の男の子と仲良くしてるのが嫌なんですよね！！？』

確かに、さっきの2年の奴が来たときも

しげとAが楽しそうに話してるときも

濵ちゃんや照史が一緒に居るときにも

多少はイラッとした。

でも、これが嫉妬？

嫉妬ってもっと軽い感覚でするもんちゃうの？

「…納得いかへん」

『いやいや、嫉妬以外の何者でもないです』

「まず何で俺が嫉妬せなあかんねん」

『え？』

「え？」

え、俺何か変なこと言うた？

『それ私に言わせるんですか、先輩』

「いやだって分からへんもん」

わざわざ妬く理由なんか無いんやから。

『…好きだから、じゃないですか？』

「何が？」

『淳太先輩が、私のこと…』

Aの顔がどんどん赤くなっていく。

…冗談では、無さそう。

え、嘘やん。

俺が、Aを好き？

この数週間、

絶対生まれるはずがないと思ってた感情。

でも、少しずつAの魅力に惹かれていく

感覚があったのも、嘘ではない。

「ごめん、やっぱりよう分からへんわ」

今の俺には、答えは出せへん。

とにかくそれだけは、ハッキリと分かった。

『淳太先輩、お願いがあります』

『玉入れ勝負では負けちゃったけど、やっぱり私とデートしてください』

「え、いや…」

『その一回で、ちゃんと先輩に好きになってもらえるように頑張りますから！』

『一回だけ…チャンスくれませんか？』

Aの真っ直ぐな視線。

確か、初めて会ったときもこんな目してたな。

俺も男として、Aの為にも

この気持ちを中途半端に誤魔化すことは出来へん。

「わかった、デートしよ」

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