押してダメなら押してみろ。〈黄〉 (ページ19)

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story 19 ページ19

junta side

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静かな校舎裏、涼しい用具倉庫。

このAと二人きりの空間のせいなのか

俺は柄にもなく、

誰かに自分の話を聞いて欲しくなった。

「なあ、少しだけ俺の話していい？」

きっとAには重たい話になる。

でも、聞き流すだけでもいいから

ただ隣で聞いて欲しかった。

『いいですよ、私で良ければ何でも聞きます』

俺の深刻な雰囲気を汲み取ってくれたのか

普段とは違う落ち着いた様子で

Aは俺を見詰めてる。

この子なら、俺に正しい答えをくれるかな。

「俺の家が会社経営してるのは前話したやろ？」

「祖父の代からやってる会社で、今は俺の父親が面倒見てるから、次に後を継ぐのは俺になってんねん」

「それで去年から勉強し始めたんやけど、経営学ってそう簡単に身に付くものじゃなくて」

「早く一人前にならなあかんってプレッシャーと、親戚からのプレッシャーで今にも潰れそう…って話」

1度話し出すと、勢いよく全部吐き出してしまった。

流石に引かれたかな、なんて

怖くてAの顔が見れへん。

「ごめんな、こんな話『それ…』

「え、？」

『それ、今までずっと、全部一人で抱え込んでたんですか？』

真っ直ぐに俺を見るAの顔は

少し怒ったような、悲しそうな

そんな複雑な表情。

「これは俺自身の問題やから、人にはなかなか話せへんかっただけやで」

『…だめですよ』

「何で？」

『だって、今の先輩の顔、凄く苦しそう』

俺の小さな変化にも気付くAが言うんやから

相当酷い顔してるんやな、俺。

『先輩には、そんな顔して欲しくないです』

『私がどうこう出来る問題じゃないのは分かってるんですけど、でも、こうして話を聞くくらいなら出来ます』

『私じゃなくても、濵田先輩とか桐山先輩とか、先輩の周りには頼れる人たくさん居ますから！』

Aなりの言葉で

必死に俺を励まそうとしてくれてる。

その姿がとにかく愛らしくて

俺の中で何かが吹っ切れた。

『な、なんで笑ってるんですか！』

「ごめん、何か可愛くて(笑)」

『私は真面目に話してるのに…！』

「ありがとう、Aのお陰で元気出たわ」

”キーンコーンカーンコーン”

丁度よく鳴り響いたチャイム。

やっと昼休みが来たらしい。

「昼飯、一緒に食べるやろ？」

『はい！』

今年の体育祭は、楽しくなりそう。

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