押してダメなら押してみろ。〈黄〉 (ページ16)

今日:16 hit、昨日:2 hit、合計:102,537 hit

story 16 ページ16

junta side

.

他「A、その人彼氏？」

『うん、彼氏！』

「おい、何しれっと嘘ついてんねん」

周りの1年生から

なかなかの質問攻めを食らうA。

まあ1年の教室に突然3年が来たら、

そらびっくりするよな。

AもAで、あることないこと答えるから

ツッコむのに夢中で話が進まへん。

まあでも、元気そうな姿が見れたし

とりあえず目的達成。

『で、先輩はなぜここに？』

「いや別に、何となく」

『明日の体育祭で感動の再会をする予定だったのでびっくりしました』

感動の再会って、何やそれ。

「まあでも、久々に顔見れたから満足したわ」

『毎日会いに来てくれてもいいんですよ？』

「明日会いに来るんやろ」

『もちろんです！』

きっと俺の感覚が

おかしくなり始めてるだけなんやけど

このAの素直さと、押しの強さに

妙に安心してしまう。

何やかんやで惹かれ始めてんのかな。

でも俺にはまだ一つ、

大きな障害が残ってる。

それがある限り、Aの気持ちには…

「じゃあ、俺帰るわ」

『え、私も帰ります！』

「あかん、ちゃんとクラスの方手伝え」

『でも…』

「明日一日、相手したるから」

『一日！？』

あ、一日は流石に言い過ぎたかも。

なんて後悔した頃にはもう遅く、

撤回する暇もなく

Aからは笑顔で「さよなら！」と

言われてしまった。

まあどうせ暇やし、ええか。

.

「ただいま」

人気のない静まり返った家に

一言そう呟くと、

「遅いぞ」

珍しく、返事が返ってきた。

今日はお手伝いさんは来やん日やし

おかんは台湾の方に帰ってる。

弟もこの時間はまだ学校やから…

「父さん？」

父「下校時間はとっくに過ぎてる、今まで何してたんだ」

「図書室寄っててん、父さんこそ家に居るなんて珍しいな」

図書室なんかほんまは行ってへんけど

これくらいの小さな嘘ならお手の物。

いつもは会社の方で寝泊まりしてんのに

何で突然帰って来たんやろう。

父「久々に時間が出来てな、勉強の方はどうだ。経営学について、少しは知識はついたか？」

「まあ頑張ってるよ、それなりに」

父「お前は祖父の代から受け継ぐ会社の跡取りなんだ、その自覚をしっかり持てよ」

「分かってます」

帰って来た途端にプレッシャーの嵐。

俺の苦手なこの雰囲気。

ほんま、居心地悪いわ。

.