押してダメなら押してみろ。〈黄〉 (ページ13)

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story 13 ページ13

your side

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『卒業しちゃうじゃないですか、』

私がこんなにも先輩に猛アタックする

一番の理由。

それは時間が無いこと。

1年の私が3年の先輩を好きになったんだから

勿論、1年後には先輩は卒業。

私たちは離れ離れになってしまう。

だからその前に、出来ること全部やって

とにかく当たって砕けたい。

ただの自己満足に過ぎないだろうけど

好きになっちゃったんだもん。

「わかったから、泣かんで」

『へ、』

想いを伝えようと必死になっていると

突然頭の上に乗った大きな手。

それは正しく淳太先輩のもので

私を宥めるように優しく撫でてくれてる。

「そもそも一緒に帰ろうって誘ったのは俺なんやから、駅まで送るのは当然やろ」

『いいんですか、？』

「いいから、早く涙拭かんかい」

私の顔を見て、優しく微笑む先輩。

私、そんな変な顔してるのかな。

でも初めて、初めて私を見て笑ってくれた。

その笑顔が、何よりも一番…

『大好きです、淳太先輩』

「知ってる」

『淳太先輩が思ってる100倍は好きですから』

「それも知ってる」

『私のことは何でもお見通しですか？』

「Aが単純なだけやな」

『とか何とか言って本当は好きなんでしょ！』

「もう俺家帰る」

『それはダメです、帰しません』

1年前までは

遠くから見ることしか出来なかったのに

今は隣でふざけて笑い合えるようにまでなった。

大丈夫。

少しずつ、進んでる。

絶対に振り向いてもらうんだ。

「おーい、人の話聞いてるか？」

『え、あ、何でしたっけ』

「体育祭、何出んのって聞いたんですけど」

『玉入れのみです』

「俺と一緒やん」

『運命ですね！！！！』

「うるさいわ」

体育祭は私にとって大事なイベント。

準備に抜かりはない。

ここで一気に距離を詰めて

もう一度ちゃんと告白するんだ。

玉入れも大事だけど、

私にとってはこっちの方がもっと大事。

「何かA、良からぬこと考えてるやろ」

『そんなに顔見詰められると、余計に惚れます』

「ほんま素直過ぎるで」

『淳太先輩の前でだけですよ』

「それはどーも」

先輩は冗談を躱すのが上手いから大変だけど

1ミリも振り向いてくれてない訳ではないし、

このまま押しまくれば何とかなるかな。

『早く好きになってくださいね、先輩』

目の前を歩く背中に、

小さな声で呟いた。

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