ページ22
寂しそうな人だと、そう思った。
否、そんな匂いがした。
その小さな唇から紡がれる言葉の一つ一つには棘がある。
でも、漂う匂いを嗅いであれ、と思った。
真っ白なんだ。
海原Aさんは、ほぼ一切の匂いがしない。
柱だから俺の鼻も利かないのだろうかと一瞬思ったけれど、しのぶさんからは溢れる憎悪の匂いがちゃんとした。
冨岡さんが禰豆子を斬ろうとした時も、きちんと殺気の匂いがした。
あの人からは、なんの匂いもしない。
それがなにを意味するのかくらい、俺にも判る。
あの人は、もう殆どの感情を殺してしまったんだ。自分で。
カナヲはまだ微かに残っている。意志が弱いだけ。
それでも、禰豆子の事を怒っていたとき、微かに匂いはした。
でもそれは、憎悪じゃなかった。怒りでもなかった。
深い深い、哀しみの匂いがした。
あの人はあの場で、きっともう流れなくなってしまった涙を、心で流していた。
だからきっと、本当に優しい人だったんだろう。
鬼を穿つ事を、心から憐れんで、苦手としていた人だったんだろう。
あの人が出て行った後、善逸は云った。
「たんじろぉ、あの人おかしいよ。生活音は確かにするよ。でも、心から、なんの音も出してないんだ。」
何時もふざけている善逸が、深刻な面持ちでそう云った。
32人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うみねこ - 今気づきました!!汗ご指摘ありがとうございます。 (2020年4月20日 17時) (レス) id: 00b8e99048 (このIDを非表示/違反報告)
雪猫(プロフ) - 突然すみません!こちら、鬼滅の刃の作品なので、オリジナルフラグを外さないと違反作品となってしまいますので、外した方がいいですよ!これからも更新頑張ってください! (2020年4月16日 11時) (レス) id: 66ded389aa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ