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第五十二夜:誰かの視線 ページ7

紅覇さんとの会話がひと段落ついた後、お互いに用事があるからと別れた。別れた後はお風呂に入って汗を流し、溜まった疲労が明日に影響しないようにストレッチやマッサージをしてから眠りについた。

それからの一週間はあっという間に過ぎ去っていった。毎日朝食をとっている途中に声をかけられ書庫に向かい魔法をかける。それが終わったら身体が鈍らないように宮廷周りを走り、剣の素振りをしたり筋トレをしたりと汗を流す。たまに紅覇さんがやってきて手合わせをした後はそのまま二人で夕食を取るという暮らしが続いた。日に日に紅炎さんに呼ばれる時間が早くなっているのは気のせいだと信じたい。


今日も同じように魔法を解き終えて自由な時間を過ごそうと思っていたら、ふと誰かからの視線を感じた。

振り返らずに気配だけ探るとどうやら建物の影からこちらを見つめているようだった。どうしようかと迷ったがその視線には敵意がなく、別に危険なものでも無いので無視していつも通り鍛錬に励んだ。鍛錬中も熱烈な視線をずっと感じたが、あえて何も気づかないふりを続けた。

鍛錬後に湯浴みした後、いつもならすぐに自室に戻るのだが今日は少し散歩したい気分だ。湯冷めしないように一枚上着を羽織ってから煌帝国の庭園を歩く。空には雲一つもなく数多の星が輝いている。


『ねぇ、あそこにいるのって今日Aのこと散々つけ回してた子じゃない?』


そろそろ自室に戻ろうと人気のない通路を歩いていると、テンダーから声が掛かった。言われてから辺りを見回すと木陰に人影を見つけた。

紅覇さんや紅炎さんと同じ真っ赤な長髪が地面につくのも気にせず、右足を押さえて蹲る少女は紛れもなく今日一日僕に熱烈な視線を送ってきた人物そのものである。遠目から見た感じ僕と同じくらいの年齢っぽい。


「ねぇキミ、大丈夫?」


別に無視してそのまま通り過ぎてもいいのだがこの通路は人通りが少なく、僕が見過ごしてしまえば次いつ誰が通るか分からない。

近付いて声をかけると少女はびくりと肩を跳ねさせ、恐る恐るこちらを見上げた。


「えっ、あの、あ、足を挫いてしまって……。」

「ちょっと見せてもらっていい?」


風の音でかき消されてしまいそうなか細い声で少女は答えた。僕は怯えた少女を安心させるように笑って、少女の前に膝をつく。

人と接することが苦手なのか怯えた様子で目を泳がせている。しばらくそのまま待つと少女は覚悟を決めたのか不安げな目で小さく頷いた。

*お礼*→←第五十一夜:皇子との食事



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作品ジャンル:アニメ
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ブルー★アース(プロフ) - おもしろいです!続き希望 (2020年8月14日 13時) (レス) id: 45f118772d (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 更新楽しみです (2020年6月6日 3時) (レス) id: 0e552ce067 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - イルさん» イルさん、ありがとうございます。面白いと言ってもらえてよかったです。魔法の名前は、アラビア語を参考に付けてます! (2020年5月17日 12時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
イル - 作者さん!すごく面白いです!!あと、魔法の名前ってどうやって決めてるか気になります! (2020年5月17日 8時) (レス) id: 9fea9825a0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えるふぃ | 作成日時:2020年5月15日 16時

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