No.48：湧いた疑惑 ページ9
二人に案内された場所は、狭い通路よりはちょっと広めに作られた空間だった。部屋の照明は落とされていて、明るい他の場所よりは幾分か気を休められそう。
そのためか結構な数の受験者がここで休んでいた。
「ほら、A。これを使うといい。
私が使ってたので悪いがな」
寝ている人が周りにいるため、小声で話すクラピカが、僕に一枚の毛布を手渡してくれる。
どうやら僕が通路で彼と会う前に使っていた物のようだ。
「良いの？
そしたらクラピカは何も掛けるものが無いんじゃ……」
「私のことは気にしなくていい。
遠慮せずに使ってくれ」
こんな時間だから、もう貸し出せるような毛布は残っていない。だからといって、彼は自分の分を渡してくれたのだ。
どうして、こうも僕の周りの人は優しいのだろう。
僕がお母様からずっと聞かされてきた話にはなかった、人間の優しいところ。
世の中は生きてる価値もない人間で溢れ返っているから、僕らは人を殺すのだと。
そんな人間を殺すことに罪悪感を感じることはないのだ、と聞かせてくれたお母様の言葉は嘘だったのだろうか。
だって、二人はこんなに優しい。
「クラピカ、ありがと。
これ、使わせてもらうよ」
「あぁ、そうしてくれ。
……今日はもう遅いから、明日に備えて寝るとしよう」
二人だけじゃない。
ゴンやキルアだって実際に話してみればいい人だった。他人と居て心地よいって思えたのは、今回が初めてだ。
「そうだね。
じゃあクラピカ、レオリオ、おやすみ」
「また明日頑張ろうな！
二人とも、寝過ごすなよ！」
もし、お母様が嘘を付いていたのだとしたら……僕は一体誰の言葉を信じればいいんだろうか。
体をすっぽりと覆う毛布は、僕がいつも使ってる洗い立ての匂いしかしないヤツと違って少し埃っぽい感じがした。
家で使ってる毛布の方が絶対温かいハズなのに、今被ってる物のほうが温かみを感じる。埃っぽいようなその匂いに何処か安心してる僕がいた。
僕はどこかでずっと、独りに怯えてたのかもしれないな。
＊
「皆様、大変お待たせ致しました。目的地に到着です」
船内の至るところに響き渡る声。その放送を聞いて目を開けた。昨日は周りに人が多すぎて熟睡するわけにはいかなかったから、まだ完全に疲れはとれていない。
熟睡せずに体を休める訓練はまだ必要みたい。
ずっと同じ体制で固まっていた体をぐうっと伸ばして、飛行船から降りた。
今度はどんな試験なのかな。
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えるふぃ(プロフ) - 冷凍みかんさん» 一年前のコメントに返信失礼します。面白いって言っていただけて感動です。頑張って書いたのが報われます…。応援ありがとうございます！ (2018年8月30日 15時) (
レス) id: 2df896d132 (このIDを非表示/違反報告)
冷凍みかん(プロフ) - すごく面白くて、読んでて楽しかったです！続き頑張ってください！ (2017年8月19日 18時) (レス) id: 86c7d5dde1 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - シロさん» 返信遅れてました(´・ω・`)H×Hは私の中でもお気に入りの漫画なので書いてて楽しいです(*´ω｀*) (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - フェイ・ルーンさん» 返信遅れてすみません。ワクワクしますか！それは嬉しい褒め言葉です(*´ω｀*)自分でも話を考えてるときはワクワクします！ (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - モッケさん» 返信遅れて申し訳ないです。面白いといっていただけてうれしいです！更新は中々出来なかったですが頑張ります(*´ω｀*) (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えるふぃ | 作成日時：2016年3月27日 19時
