No.67：蛇に睨まれた蛙 ページ29
「どうしたんですか？ Aさん、早く所定の位置についてください！」
バクバクと心臓が早鐘を打ち、背中を汗が伝う。立会人に急かされてもなお、僕の足は動こうとはしてくれなかった。全身の震えが止まらない。
待ちきれないと言いたげにヒソカがこちらを見つめた。彼と目を合わせると、金縛りにあったように全身が硬直した。それほどヒソカとの戦いを体が拒絶していた。
そうだ、こんな勝ち目のない試合捨てて仕舞えばいい。この際プライドなんてどうでもいい、ヒソカの次には老いぼれた老人しか残ってないんだ、逃げてしまえ。
「っ、立会人！僕はこの試合、」
「ねぇA。まさかキミ、この試合棄権する、なんて言わないよねぇ？」
そう思って棄権を告げようとしたら、ヒソカが話に割り込んできた。彼はもう所定の位置に付いていたというのに、一歩一歩とこちらに近づいてくる。楽しげに細められた目、吊り上がった口角、ねっとりと絡みつく視線。嫌なはずなのに、見たくないはずなのに何故か彼から目を離せなかった。
ヒソカは歩みを止め、動けないでいる僕の真ん前に立つとするりと僕の頰を撫でた。その手は死んだ様に冷たく、ぞわりと背中が粟立った。次いでしゃがみこみ、僕と目線を合わせると後頭部を引き寄せて耳元で囁く。
「ボクと戦ってくれないとキミ、殺しちゃうよ？」
瞬間、ヒソカから殺気が漏れ出す。ソレに触れた体の震えは収まり、硬直が解けていた。
殺気。それが僕にとっての日常だった。常日頃から触れているソレを体が覚えていたのだろう。恐怖でショート寸前の思考回路を一気に現実に引き戻してくれた。
「……またせてごめん。準備、出来た。」
いつも仕事で愛用しているナイフを握りしめる。うん、もう大丈夫。精神状態は安定した。
あとは、どうやって目の前の敵を倒すかだ。
クラピカとの試合を見ている限り、ヒソカは開始直後はこちらがどう出るかを伺うことに徹していた。つまり自分からは攻撃を仕掛けてこない。この与えられた猶予の中で勝利するための計画を練らなければならない。
まず、この試験のルール、相手を殺してはならない。これはヒソカ相手では無視していいだろう。
というかヒソカは何か間違いがあっても僕には殺せない。だからいつもの本気を出せる。
問題は先頭が苦手な僕が、どうやって相手を自分のペースに持ち込むか。
出し惜しみなんてしてられない。
「それでは、試合始め！！」
こちらも殺る気でいくしかない。
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えるふぃ(プロフ) - 冷凍みかんさん» 一年前のコメントに返信失礼します。面白いって言っていただけて感動です。頑張って書いたのが報われます…。応援ありがとうございます！ (2018年8月30日 15時) (
レス) id: 2df896d132 (このIDを非表示/違反報告)
冷凍みかん(プロフ) - すごく面白くて、読んでて楽しかったです！続き頑張ってください！ (2017年8月19日 18時) (レス) id: 86c7d5dde1 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - シロさん» 返信遅れてました(´・ω・`)H×Hは私の中でもお気に入りの漫画なので書いてて楽しいです(*´ω｀*) (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - フェイ・ルーンさん» 返信遅れてすみません。ワクワクしますか！それは嬉しい褒め言葉です(*´ω｀*)自分でも話を考えてるときはワクワクします！ (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - モッケさん» 返信遅れて申し訳ないです。面白いといっていただけてうれしいです！更新は中々出来なかったですが頑張ります(*´ω｀*) (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えるふぃ | 作成日時：2016年3月27日 19時
