No.62:記憶の靄 ページ24
あれから僕とキルアは一緒に行動することになった。彼も僕の実力を認めてくれているみたいで、交代で眠り、休む提案には賛同してくれた。お陰で僕らは他の人たちよりもはるかに体力的には有利になったと思う。
二人で手分けして食料を探し、水を調達し、寝床を確保する。そんな生活を4日ほど続けて、四次試験の期限は明日を残すのみになった。
今は森に囲まれた岩山の中間あたりにできた横穴で、時間を潰している最中。
ここなら並大抵の実力者では上がってこれないし、木々が入り口を隠してくれているため見つかりにくい。
昨日は僕が睡眠をとって休憩したので、今夜はキルアが休む番だ。なのに彼は休む気配を見せずに入り口近くに座って、ただじっと遠くの方を見つめている。
「今日キルアの番だけど、休まなくていいの?」
「うーん、それよかさ……Aって俺の家遊びに来たことあったか?」
その様子が気になって、彼の隣に座って声をかけると、彼はこちらを見ないまま口を開いた。今までにないその態度がやけに気になった。彼は自分の記憶を確かめているようにも見えたから。
キルアに言われて昔の記憶を掘り返してみる。小さい頃の僕も今と同じように訓練ばかりで遊んでいる暇なんてなかったはずだ。
二次試験の際に気づいた、自分の記憶の靄がかかった一部分にその記憶がある可能性は低いし、なにより記憶が欠けていることをキルアにはなんとなく知られたくなかった。
「キルアの家って、ゾルディックにってこと?
僕、仕事以外で家の外に出た記憶はないけど」
「……やっぱりか。あー、なんか変なこと聞いてごめんな?」
あの質問が何か重要なことに関係しているのかと思って、どうしたの?と聞き返したけれど彼はただ笑ってなんでもないと言った。
しばらく沈黙が流れた後、再び彼が口を開く。
「なぁA。……友達って思えるやついるか?」
彼の言葉に何も反応できない自分がいた。なぜかすぐにでも僕はキルアを友達だと思っているよと言ってあげないといけない気がした。けど家族のことを思い出して、何も言えなかった。
固まった僕を見てキルアの顔が悲しそうに歪む。だけど彼はすぐになんでもなかったかのように笑顔を作る。
その顔を見るとずきりと頭痛が走った。僕はこの感情を押し殺した作り笑顔をどこかで見たことがある、そんな気がした。
こちらに背を向けたキルアの「やっぱ暗殺者に友達なんて」と言う言葉さえ否定できない自分に腹が立った。
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えるふぃ(プロフ) - 冷凍みかんさん» 一年前のコメントに返信失礼します。面白いって言っていただけて感動です。頑張って書いたのが報われます…。応援ありがとうございます! (2018年8月30日 15時) (レス) id: 2df896d132 (このIDを非表示/違反報告)
冷凍みかん(プロフ) - すごく面白くて、読んでて楽しかったです!続き頑張ってください! (2017年8月19日 18時) (レス) id: 86c7d5dde1 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - シロさん» 返信遅れてました(´・ω・`)H×Hは私の中でもお気に入りの漫画なので書いてて楽しいです(*´ω`*) (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - フェイ・ルーンさん» 返信遅れてすみません。ワクワクしますか!それは嬉しい褒め言葉です(*´ω`*)自分でも話を考えてるときはワクワクします! (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - モッケさん» 返信遅れて申し訳ないです。面白いといっていただけてうれしいです!更新は中々出来なかったですが頑張ります(*´ω`*) (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えるふぃ | 作成日時:2016年3月27日 19時