No.56：自己嫌悪 ページ18
扉が開いて中から人が出てくる度にそこに目をやってしまう。気配であの四人の中の誰でもないことぐらい分かっているのに。
あの後ヒソカの近くに居続けるには気まずくて、２９４番の禿頭の男が入って来たのを理由にして、僕は彼からできるだけ距離をとった。
結局彼は何であんなことを言ったのだろうか。僕が困る反応を見たかったから？……いや、そんなことはどうでもいい。本当に問題なのは彼の質問に答えられなかった事の方だ。
ゴンやキルアと一緒にいて楽しかったのは事実。クラピカもレオリオもそんなに面識のない僕に優しくしてくれた。だから、他の受験者よりは特別に思っている。それだけは確か。
だけど『友達』の関係にあることを肯定するには、僕の心は弱すぎた。
彼らを友達だと言い張るのなら僕は両親に、兄たちに反抗しなければならない。それは、オルクスに生まれたからと我慢している弟を裏切る行為になる。いずれ厳しく躾けられることになる妹に疎まれるかもしれない。
僕にはそれらを成し遂げて、受け入れる勇気が出せなかった。
では何故、ゴンたちの到着を待っているのか。そう問われたら僕はきっとこう答えるだろう。
ゴンならば全てを受け止めて、それでも尚、僕と一緒にいてくれることを選ぶだろうと思ったから、と。
彼は優しいから、落ち込んだ僕を慰めてくれるかもしれないと期待したからだ、と。
そんな利己的な考えをする僕と友達にならなくて彼らも喜ぶんじゃないか、なんて自己防衛をしだす自分自身に嫌気がさす。
「残り１分です」
スピーカーから三次試験の終了時間が迫ってきていることが知らされる。
そこで一旦思考を停止させて部屋を見回してみるも、やはり探し人たちの姿を見つけることはできなかった。
四人とも間に合わなかったのかと思いかけた時、扉の向こうに見知った気配を感じた。
思わず立ち上がってその扉を凝視した。
ゆっくりと開いた扉から出てきたのは、ずっと待ち侘びていた人物たちで。
ボロボロになってはいたが元気そうで、達成感に満ち溢れていて。
四人の中で誰一人としてかけることなく三次試験を突破していて、一言では言い表せないぐらい嬉しかったのだけれど後ろめたい気持ちもあり、僕はすぐに近づくことができなかった。
けれど。
「あっ、A！よかったー、こっちに来なよ！」
「……うん、今行くよ。みんな、お疲れ！」
ゴンに笑顔で呼ばれてすぐに駆け寄ってしまうあたり、僕はずるい人間だ。
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えるふぃ(プロフ) - 冷凍みかんさん» 一年前のコメントに返信失礼します。面白いって言っていただけて感動です。頑張って書いたのが報われます…。応援ありがとうございます！ (2018年8月30日 15時) (
レス) id: 2df896d132 (このIDを非表示/違反報告)
冷凍みかん(プロフ) - すごく面白くて、読んでて楽しかったです！続き頑張ってください！ (2017年8月19日 18時) (レス) id: 86c7d5dde1 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - シロさん» 返信遅れてました(´・ω・`)H×Hは私の中でもお気に入りの漫画なので書いてて楽しいです(*´ω｀*) (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - フェイ・ルーンさん» 返信遅れてすみません。ワクワクしますか！それは嬉しい褒め言葉です(*´ω｀*)自分でも話を考えてるときはワクワクします！ (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - モッケさん» 返信遅れて申し訳ないです。面白いといっていただけてうれしいです！更新は中々出来なかったですが頑張ります(*´ω｀*) (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えるふぃ | 作成日時：2016年3月27日 19時
