No.72:普通の望み ページ34
ギタラクルはキルアのことを人間ではなく、ただ人を殺すことだけを望む人形であると言い放った。キルアはその言葉に何一つ反論できずにいる。うっすら浮かべていた冷や汗はいまや一つ一つがどんどん巨大になり、粒の様になっている。
「俺にだって欲しいものくらいある。」
「ないね。」
「ある! 今望んでいることだってある!」
ふいに何も反論せずに黙って聞いていたキルアが口を開いた。僕らの前では声を荒げることの無かったキルアが、ギタラクルの言葉に叫ぶ様に返す。必死さがこちらにも伝わってくる様だ。
ギタラクルはあまり興味なさげにキルアに望みを言う様に促す。ただキルアは兄であるギタラクルを恐れている様でなかなか口を開けないでいた。しかしギタラクルに本当は望みなんてないんだろう、と言われるとそれに噛み付く様に反論した。
「違う! ゴンやAと……友達になりたい。」
自分の心臓がドキリと跳ねた。ゼビル島でのキルアの悲しげな笑顔を思い出す。僕はあのときキルアのことを友達だと思っていると言ってあげられなかったのに、キルアは今でも僕と友達になりたいと思っているなんて。
キルアは続けた。人殺しをやめて普通になりたいと。普通の子供の様に友達を作って遊びたいと。そんな周りからすると普通の望みなのに、僕らにはそれが手が届かないくらい贅沢な望みに思える。
幼い頃から殺し屋として暗殺者として育てられてきた僕らは『普通』を知らない。
「無理だね。お前に友達なんて出来っこないよ。
ギタラクルはキルアの望みをあっさりと却下した。ゴンのそばにいれば、ゴンのことを殺せるか殺さないか試したくなるとまで言い放った。そこに『ゴン』の名前しか出されないことに僕は違和感を感じた。
そんな時黙って2人の様子を見ていたレオリオが声を張り上げた。キルアにそんな奴の話に聞く耳を持つなと。さっさとそいつを倒して合格してしまえと。
「とっくにお前ら友達同士だろーがよ! 少なくともゴンはそう思ってるはずだぜ!! Aだってそうだろ!?」
「っ、ぼく……は、」
落ち着いていた心臓がもう一度大きく跳ねた。レオリオ達には僕らの関係はとっくに友達に見えていた。僕が認めていなかっただけで。
だけど、それでも、僕はレオリオの言葉に反応できないでいた。ただ一言そうだよ、と言うだけでいいのに。首を縦に振ればいいだけなのに。
ギタラクルがキルアだけに向けていた視線をこちらにむけ僕の目を見つめた。
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えるふぃ(プロフ) - 冷凍みかんさん» 一年前のコメントに返信失礼します。面白いって言っていただけて感動です。頑張って書いたのが報われます…。応援ありがとうございます! (2018年8月30日 15時) (レス) id: 2df896d132 (このIDを非表示/違反報告)
冷凍みかん(プロフ) - すごく面白くて、読んでて楽しかったです!続き頑張ってください! (2017年8月19日 18時) (レス) id: 86c7d5dde1 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - シロさん» 返信遅れてました(´・ω・`)H×Hは私の中でもお気に入りの漫画なので書いてて楽しいです(*´ω`*) (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - フェイ・ルーンさん» 返信遅れてすみません。ワクワクしますか!それは嬉しい褒め言葉です(*´ω`*)自分でも話を考えてるときはワクワクします! (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - モッケさん» 返信遅れて申し訳ないです。面白いといっていただけてうれしいです!更新は中々出来なかったですが頑張ります(*´ω`*) (2016年11月12日 0時) (レス) id: d0667a2ad3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えるふぃ | 作成日時:2016年3月27日 19時