In the storm 4

154 ページ4

.









「とっておきの場所ってここ？」







手は離さないで、半歩ほど後ろを歩くお前は周りを見てキョロキョロする







賑やかな場所を抜けて、河原沿いに降りた








昼寝をしてる人

ギターを持って歌ってる人

等間隔に間を開けて座るカップルたち

はしゃいでる学生のグループ







色んな人がいるこの河原沿いは


別に静かでもなんでもなければ
話しやすいわけでもない




別に思い入れがある特別な場所でもないけど





ただ、前にここを通った時に




幸せそうなカップル達を見たらさ




俺もいつか好きな子と
ここに座って何でもない時間を過ごせたら



そんな小さい夢を持っていたから



ここにきた理由はたったそれだけなんだ






夢を叶えるならお前がいいって




俺のわがままな願望








人のいる場所から少しだけ離れて






大我「ここに座ろっか」






持ってたハンカチをひいてあげる


普段ハンカチなんか持ち歩かないけど







大我「俺の女子力すごくない？」






なんて意味のないアピールもお前が笑ってくれたらそれでいい








「大我といると目まぐるしくいつも時間が過ぎてくから、こんなゆっくり過ごすなんて初めてじゃない？」




大我「お前はそういう方が好きなのかと思って」





「ん〜まぁ、大我とはそれでいいね」









お前と北斗の間に流れてる時間と

俺とお前の間に流れる時間は






うまく言えないけど



何かが違うってわかってる









でも






いつも笑って、はしゃいでた
俺が一度失ってしまったお前の笑顔を
取り戻したくて必死だった







俺といて、楽しいって思ってもらいたくて




1秒でも無駄にしないようにしてたんだ








「京都っていいところだね」



大我「そうでしょ？お寺めぐりとか楽しんだよ」








川の流れのように



今だけは俺らの時間も緩やかに流れる






ずっとこのままでいいのに



そう思ってしまう俺は


話の切り出し方に迷ってしまって


黙り込む






きっと、この先俺とお前の関係は



今より少し変わってしまうから




今、この瞬間を噛みしめるように



俺はぎゅっとお前の手を握った








決して無駄では無い沈黙を







「大我、あの日のこと 聞かせてよ？」







破ったのはお前から








.

155→←153 Taiga side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す