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知らない感触、知らない匂い、知らない温度。
知らない情報が一気に身を襲って。
夢か現実かも分からず、目を開けて何度か瞬きをしながら考えた。
あぁ、ウタさんの家、香り、温度。
眠っていたのか、と身体を起こすとはらりと落ちるブランケット。
かけてくれたのだろう、ウタさんが。
当の本人はソファへ突っ伏すようにして、寝息をたてている。
落ちたブランケットをウタさんへかけて。
しばらく、寝顔でも眺めておこうか。
先に目覚めた朝もたっぷり見たけれど。
色濃い睫毛が、まるで目を閉じながらも瞬きしているかのように震えて。
ふっくらとした赤い唇。
特徴的な鼻は思わず摘みたくもなる。
しゅうっとした輪郭もなぞりたくなるほど綺麗だ。
総じて整った顔をしているのだろう。
日本人とはやっぱり少し違う。
見れば見るほど、ジョンヒョンに似ている。
ふわふわとボリュームが多い頭は一度、指を通して見たかったのだ。
うずうず、と堪えきれず、そっと伸ばした指。
意外と、しっかりしている髪質。
もっと猫っ毛かと思っていた。
ふわふわの髪と、もこもこのセーターが、よく似合っている。
ひとりでくすくすと髪を堪能していると不意に開かれた瞳。
アーモンド型のまんまるとかっちり合う。
寝起き特有の雰囲気をまとって、微かに、唇が形を作る。
「おはよう」って、確かに、動いた。
「おはようございます。」
ん？うん、と傾げて縦に振って。
ウタさんが、声を出す素振りなんて、初めて見た。
それなりに顔を合わせる回数はあったけれど、笑う時以外は頑なに閉ざされていた気がするのに。
「すみません、酒飲んで急に寝るなんてお見苦しい事を…。」
ボードが手元にないのか、首の動きだけで反応してくれる。
猫のように伸びをして、変な体勢で眠って固くなったのか、何度か肩や首を回しながら立ち上がった。
その後ろの縁側を見れば、空は赤く染まり。
すっかり長居してしまった、と私も立ち上がって荷物をまとめた。
冷蔵庫から2本水を持ってきたウタさん。
それを受け取ってパキっとキャップを開けた。
乾いた身体に心地いい冷たさが潤していく。
飲み終わったのを見計らって渡されたのはヘアゴムで。
なんで持ってんだろうとか面倒でとりあえずお礼を言って受け取った。
「お邪魔しました。」
アウターを羽織って荷物を持って。
縁側でお礼を言うと、ちょっと待っててのジェスチャー。
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作者名：ヨシハラ。 | 作成日時：2019年10月16日 0時
