レンゲソウ (ページ45)

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『かえらなくていいの？』

「早く帰れってことですか？」

『そうじゃないけど、』

「私たち仕事も何もないじゃないですか～、無職同士仲良くしましょうよ！」

朝も昼もない時間。
ふたつのメガネはすぐにテーブルの上に並べられて。
暇だし酒でも飲みましょうか、と、昨晩残った瓶を出てきたA。
酔っ払ったAは、ちょっと、女々しいというかなんというか。
絡み酒っていうの？くだ巻いてる感じ。
弱くは無いのだろうけれど。
昨晩も結構飲んでたし。
煙草も吸いに行かず、手酌しながら杯は増えるばかり。
俺も何か予定がある訳でもないし、潰れてくれても構わないけれど。
むしろ、ひとりで居るより楽しくはあるけれど。
心配にはなる。

『のみすぎじゃない？』

「飲みすぎじゃない！」

あぁ、そう。と心の内で返事をしながら、俺も目の前のグラスを煽った。

「おお！いける口ですね！飲みましょう。飲み明かしましょう！」

今何時だと思ってんの。
飲み明かすって、あとこの状態が何時間続くと…。

グラスが空く度に注がれる透明の液体。
昔に比べれば飲めるようにはなったと思うけれど、それでも、一般的には弱い部類なのに。
グイグイ飲まされ、時々誤魔化して。
時間にすれば、1時間半くらいは飲み続けただろうか。
Aがうとうととし始めて、時折しーんと黙るタイミングが増えてきて。
気づけば、ソファでまあるくなって眠っている。
解けかかっているヘアゴムを解くと、ほんのり色付いた頬をパラパラと髪が隠して。

仮にも男と二人っきりという自覚無さすぎない？
そういえば、ジンギヒョンとも、二日間一緒だって言ってたし。
こんな所には宿泊施設すらない。
と、言うことはAの家で過ごしたという事だ。
それなりに若いふたりが揃うと、何も無かったなんて言い訳にもならないと思うのだけれど。経験則。

髪を耳にかけるように避けて。
するりと頬を撫でると眉間によるしわ。
こんなにいい女を置いて何もしないジンギヒョンではないだろう。

敷きっぱなしの自分の布団に連れていこうか迷ったけれど、俺も酒が入っているから無事に運びきれる自信がなくて。
仕方なく、ブランケットを取りにだけ行って、戻ってきた。
寝苦しそうに、寝返りをうち、仰向けになってるAへそれをかける。
ぴっちり上まで止められたデニムシャツのボタンをいくつか外して。

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