レンゲソウ (ページ40)

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ウタさんと迎えた新年は、ゆっくりと過ぎていく。
無駄な相槌が入らないからか、ウタさんが考えながら一文字ずつ記していくのを待っているからか。

少しだけ、私の話をした。
仕事の話だけ。
格好いいと、みっともない姿に対して言ってくれるウタさん。
その言葉には、なんだろう、上辺なんかじゃなくて、とても真剣に言ってくれているように思えた。
文字しか見えないのに。
ウタさんの顔がそう言ってんだもん、多分、真剣に言ってくれたよね。

ウタさんの話は、全然聞けなかった。
住んでいた所もしていた仕事も。
今はしていないという事だけ、分かったけれど。

「そろそろ寝ますか？」

お酒を飲んだウタさんは、こくこくと何度か瞼を下ろしながら船を漕いでいた。
声をかけると、はっとしたように目を開けて、頷いて立ち上がる。

『ふとん、しいてくる。』

「お願いします。その間に寝る用意と着替えしておきます。」

ウタさんがリビングを後にしたのを確認して、ばさりと脱ぎ捨てる衣服。
楽なスエットに着替えて、施されているメイクを落として。
寝る前に煙草吸おう、と縁側へ靴を履いて出る。

「さっむ…」

無遠慮に吹き付ける風に思わず肩を竦め。
がちがち震えながら煙草へ火をつけた。
寒さゆえの白い吐息か紫煙かわからない物が口からふわふわと出ていく。
何度か灰を携帯灰皿へ落としていると、室内からウタさんが布団敷いたから、先に行ってる、というジェスチャーをしてくれるのが見えて。
笑いながら、大きく丸を腕で作って答えた。

短くなった煙草を消すために灰皿へ押し付け、空を見上げる。
ちりばめられた星たちが濃紺に煌めいて。
あと数時間で初日の出が見れるなぁとか思いつつ。
見ないけど。寝るけど。

寒さに自分の肩を抱いて、部屋へと上がり、歯磨きを済ませた。
どこに敷いてくれたんだろう、ととりあえず光が漏れる部屋の襖を開ける。

「ウタさん、どこで寝ればいいです…か…？ここ？」

うんうん、と二度頷くウタさん。
少し間隔をあけて、敷かれる二組の布団。

『ごめん、いやだった？』

「私は…別に…ウタさんが嫌かと。」

『こことリビングしか、エアコン無くて…ぼくは全然かまわないけど。』

「ウタさんが大丈夫でしたら…お邪魔、します。」

とりあえずウタさんが転がってない方の布団へと腰を下ろした。

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