レンゲソウ (ページ37)

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年末ならではの番組をくるくるチャンネルを変えながら見て。
そろそろお蕎麦の用意でもしようかと立ち上がって冷蔵庫を覗く。
持ってきた一式のままで冷蔵庫に入れられている鞄を取り出して、材料を取り出して、ふ、と視線に気づき隣を見ると、ウタさんが立っていた。

「び、っくりしたぁ…肩とか叩いてくださればよかったのに。」

『ごめん、セクハラ！とか言われたらどうしようかと…』

「言いませんよ、そんな事。」

笑いながらウタさんの肩を叩くと、逆に驚いた顔をして、すぐに笑顔を見せてくれる。

「これで、ウタさんに肩を叩かれようが背中を叩かれようがおあいこです。それに、セクハラってそんな間柄でもないのに何かしらの行為の中に性的な気持ちがこもってたらなるものですし。」

うんうんとひとりで頷いていると、肩をぽんぽんと叩かれて。
ん？とウタさんの方を見た。

『いやじゃなかったですか？』

「はい、まったく。それに、嫌な相手でもなんでもないですから。さて、お手伝いしてくれます？」

こくこく頷く姿にネギとかまぼこを渡して切ってくれるようにお願いする。
その間に私も蕎麦の用意を。
出汁は市販の物だけれど、にしんの甘露煮は事前に作っておいたものだ。
口に合うかはわからないけれど。

23時半。
どうにか出来上がった年越しそば。

「ネギとかまぼこはセルフです。好きなだけどうぞ。」

頷いたウタさんが半分ずつ器に入れてくれて。
セルフの意味あったのかな？と思いつつふたりでテーブルについた。

「いただきます。」

手を合わせて、ズルズルとすする蕎麦。
こんなの久しぶりすぎて、なんだかすごく日本人してる、私。

「にしん蕎麦は西の方…京都でよく食べられるんですけどね、なぜだか、生まれも育ちも関東な我が家ではこれが定番なんです。しっかりとした出汁と甘辛いにしんが、すごく好きで、何でもない日にでも食べたいくらい。」

『ぼくも、京都いったことあります。すごく、前だけど。』

「そうなんですね！お口に合います？」

『おいしい』

「それは良かった。ウタさんが居た国では何かするんですか？年末とかお正月とか。」

『大人になってからは、仕事ばかりでした。すごく忙しかったです。こどものときは、これと決まったものはなくて、冷蔵庫の一掃をします。』

「そうなんですね。」

ウタさんが居た国も知らないけれど、文化とはやっぱり様々なのだなぁ。

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