レンゲソウ (ページ35)

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本格的な冬支度が始まって。
実家に帰ろうかとも悩むけれど、行き来がなぁ、と自分が選んだ事ながら渋ってしまう。
今年くらいはいいかとも思うけれど、ひとりは寂しく。

［年末年始は実家に帰りますか？］

タイミング良くウタさんからの連絡が来て、結局帰らない事にした。
どうせ実家には弟夫婦も行くだろうし、私が行っても肩身の狭い思いしかしない。

［ウタさんも家に居るのでしたら一緒に年越ししませんか。］

返事をするとすぐに了解の旨が届いた。
お節なんてものは作らないけれど少しだけ豪華な食事を摂ろう。
うんと高い酒を開けよう。
それだけを心に決めて、雪対策や年賀状、買い出しに追われる日々。
年末年始は少しだけ人が増えるはず。
町に住むおじいちゃんおばあちゃんの子供たちが帰ってくるから。
長居はしないだろうけれど。
最近の幼い子供たちは、こんな所楽しくもないだろうし。
下手すれば戻ってこない家もあるだろうな。

やっぱり、冬は、寂しい季節だ。

「お邪魔します！」

いつも通り縁側に繋がる扉を開けると、変わらずそこにいるウタさん。
出会った当初より、随分、髪が伸びた。

『いらっしゃい。さむいし、上がってください。』

縁側にはよくお邪魔するけれど、家の中に入るのは初めて。
玄関からの方がよかったかな？と思いつつ、靴を抜いで上がった。

『すごいにもつ。何持ってきたの？』

「色々持ってきました！着替えとか、料理とかお酒とか、お泊まりセット！」

『くるま？』

「あ～！車の選択肢がありましたね、そういえば。何も考えず歩いてきました。」

『重かったでしょ。れいぞうこ、入れとく。』

顔だけでくすくす笑うウタさんに料理や酒が入った鞄を手渡した。
ずん、っと下がる左腕にちょっと驚いていたけれど。

ウタさんの部屋は特に何もなくて、コタツとテレビと、ちょっと高そうなオーディオ機器。
ぐるりと見渡しているとぽんぽんと肩を叩かれ座るように促された。
暖かいリビングへ入りどこに座ろうか悩んだ挙句ローテーブルの前の床へ座った。
笑いながら向かい側に座るよウタさん。
なんか、のんびりしてて、いいなぁ。

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