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Aに付いてきたは良いけれど、何もない…驚くほど。
最後のチェックポイントと言ったのは大げさではなく、まさしくその通りだったのかと。
ここに、ジョンヒョンが居るかもしれない、と思うとまた、考えてしまう。
駅の写真や風景を残しておいたから、多分これから、自分が今だ、と思ったタイミングで訪ねて来れるとは思うけれど。
僕は、ジョンヒョンに会う資格があるのか、分からなかった。
会いたい気持ちはもちろんあるし、Aが指すその人が本当にジョンヒョンなのかも確かめたかった。
ただ、それだけ、なのだ。
僕に会うことで、辛い思いをさせてはしまわないか。
辛いことを思いださせてしまわないか。
それが、心配でならない。
捨てるつもりではない事、きちんと分かってはくれていると思う。
いや、これこそが思い違いかも知れないし、やっぱり自信もないのに会うべきでは、ないかもしれない。
「はい、どうぞ。何もお構いできませんが。」
昼前に都内を出たと思ったけれど、たどり着いた頃にはあたりは暗くなり始めている。
外灯もまともにはないここは、余計に、暗く感じた。
「何もないでしょ。」
荷物を広げて片付けているAを眺めていることしか、やることがない。
「あ、ウタさんに連絡しとこ。」
「なんの、連絡？電話？」
電話なら、もしかしたら、声で判断出来るかもしれない。
「んー、ううん、メッセージだけ。ウタさんの声、聞けないんだ、まだ。」
「え？」
言ってよかったのかな？と首を傾げたA。
仮にその人がジョンヒョンならば、ジョンヒョンは声が出せないと言うのだろうか？
なぜ？どうして？最後の記憶では、会話まで、したのに。
「やっぱり知らない人に話されると嫌だろうから、忘れて。」
スマホを取り出したAは、アプリを開いて、文字を打ち出している。
無遠慮な日本語や漢字の羅列に、ジョンヒョンなら読み取るだけでも一苦労だろうな、と思う。
「ウタさん？とはいつもメッセージで会話するの？メモ帳とか、スマホの。」
経験があるから。
話せない、話したいタイミングで、話せないことも。
出したくても出ない声。震えるばかりで発せられない音。
あの、辛さは、誰よりも分かるはずだ。
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作者名：ヨシハラ。 | 作成日時：2019年10月16日 0時
