◎27 ページ27
.
「“え？ホテル取ってないの？！なんで？”」
「“どうにかなると思って。”」
あっけらかんと口を開けて笑うジンギの口内に拳をぶちこんでやりたい。
どうして日本に住みながら日本へ移動した私が予約していて、海外から来たジンギが予約していないのか。
最悪私はネットカフェでもカプセルホテルでもいいか、と肩の力を抜いた。
「“案内するよ。ビジホだけど文句言わないでね。”」
「“一緒に泊めてくれるの？”」
「“シングルに人連れ込んで泊めたら大体のホテルはダメなの。だから、私が予約したとこ使って。”」
「“Aは？”」
「“適当に夜を満喫して朝になったら帰るよ。”」
「“部屋変えてもらえば？ツインとか。”」
「“……取れたらもうひとつシングル取ろうか。”」
決まれば早い。
さっさと移動して、ホテルの受け付けへ。
部屋が空いているか尋ねれば、シングルは満室だと言う。
こういう、なんだろうな、細々した事は苦手なのだ。
ホテルをハシゴして探すのも、もちろん、めんどくさい。
「おふたりでしたら、ツインルームが一室だけご用意できますが…」
「あぁ、いえ、」
「それで、お願いします。」
「ちょ、っと、ジンギ。」
「かしこまりました。」
私の方なんて目もくれないジンギがルームキーを受け取って、進んでいく。
ごゆっくり、と言う声が聞こえるけれど、ゆっくりなんて出来るわけが無い。
どうして、なんで、二回目の再会にして同じ部屋で寝なくてはいけないのだ。
年頃……いや、そんなに若くはないし、酸いも甘いもとうに経験してきたような年齢だけれど。
まぁ、男女ふたりが揃えば、何も無くても何か起こるようなそんな歳なのだ、まだ。
「ジンギ！待って、ってば！」
「ん？」
「ひとりで使いなよ、部屋。私取ってた部屋そのまま使う。」
「なんで？」
「なんで、って。久しぶりに言おうか？仮にも、あなたは、」
「アイドルなんだから？アイドルらしく？影響力や勘違いを与えないように？」
「わかってるなら言わせないで。」
エレベーターの到着を待っているジンギの視界へ入るように立ち止まると、不意に掴まれる腕。
タイミング良く到着したエレベーター。
何の反応もなく半ば引きずられるようにして乗り込んだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 43人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ヨシハラ。 | 作成日時：2019年10月16日 0時
