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直接会うのは二回目なのに、ブランクなんかひとつもなくて。
一度目に至っては会ったと表していいのかも分からないくらい。
Aの人柄のせいか、物怖じしない性格のせいか。
「でも、本当に急だよね。」
「あー、ごめんなさい。用事あった？」
「……悲しきかな、全くない。」
「かなしきかな、悲しい？」
「そうそう、悲しい。何か、隠し事してる？」
5年前と変わらない紙巻の煙草を一息吸って灰皿に押し付けたA。
さり気なく、どこに住んでいるか確認できれば、それだけでいいのだけれど。
その、ジョンヒョンに似た人が元気ならば、それだけで。
「なに？隠しごと？」
「うん、隠し事。私に会うためなんかにわざわざ来ないでしょう？他に気になることがあるのかと思って…たとえば、私の隣人とか。」
「りんじん、ってなに？」
「隣の人のこと。つまり、ジョンヒョンさんに、よく似た彼のこと。」
「あぁ、ウタさん？」
演技は、上手くなった気がする。
嘘に嘘を重ねることを選んだ僕は、僕たちは。
等しく、嘘をつく。
「そんなんじゃなく、落ち着いから、少しだけ。たくさん、連絡くれて、嬉しかった。」
じいっと睨むようにふたつの瞳が揺れて。
負けじと、僕も睨み返した。
特に感情なんて込めずに。
「あぁ、そう。」
信じていないような声音で、Aも瞳の色を消した。
「なんでもいいけどさ、元気なら、それで。」
「ありがとう。元気だよ。」
また少しだけお酒を飲んで、並んだものを食べて。
いつも思うけれどすぐそこの異国なのに、どうしてこんなにも食が違うのか。
種類も多く、食べるために生まれてきた僕としてはとても嬉しい事だ。
「ごちそうさまでした。」
「ごちそうさまでした！おなかいっぱい〜！」
全部僕が出すと言ったのに、Aはひとつも譲らず、結局半分ずつ払って店を後にした。
女の子は可愛くご馳走さま、と言ってくれるだけで払いがいがあるとは思うのだけれど。
付き合ってもいない、友人として末永く付き合っていくなら奢られる道理がないとAは言う。
そういう所も、嫌いではない。
僕もAと付き合えば、より良く接してあげることが出来るのだろうか。
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作者名：ヨシハラ。 | 作成日時：2019年10月16日 0時
