べた惚れくん (ページ8)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:30,211 hit

. ページ8

.

そんなことを思いながら、未だに掴まれている腕に熱を感じる。
まだ、状況は掴めていない。

走って、走って、…いや、そんなに走ってないかもしれないけど
私には、すごく長く感じた時間、走った。

人気のない渡り廊下に来て、そこのまた見つからなそうな角で佐藤くんは私の腕を離した。

息が上がった私と、そんなに息が上がってない
佐藤くん。
…カッコいい。

「…ごめん、急に」

「いやっ、全然、」

「俺のこと、知ってる、…よね？」

「もちろんっ、佐藤くんのこと知らない人、多分いないし…」

「よかった、」

緊張しているのか、目をパシパシする佐藤くん。
…え、かわいい。

「…あのね、」

「うん、」

「……好き、です、」

「………うん？」

「…Aさんが、好き、」

「………………え？」

え、なに？夢？これ。
憧れにも近い好意を抱いていた相手、しかも叶わない結末しか見えなかった人。

そんな人が、私に？…私を？好き？

…まって、好きってどういう意味の、？

「だから、良かったら、付き合ってください、」

「はい、……え？」

はい、夢決定。
こんなこと。ないでしょ、現実に。

「え、や、やった！」

私は喜ぶ佐藤くんの前で自分の頬を叩いてみるけど、痛くて。あれ？現実？

.