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「おい、お前ら調子はどう、…は?」
がらら、とドアの開く音と同時にあの守銭奴の声がした。
「あー、いやはや憲剛君。どうしたのかな?ほら!勘久郎!そろそろ離して!」
「んー?どうしたんすかぁ?」
ニヤッとしながら私を見下ろしてくるその表情はどこか楽しそうだ。
―――このドSめ。
一方憲剛は引き気味にこっちを見て来る。
「悪い。そうゆう事なら俺はこの辺で、」
「あーーーっ!!!違う!違うから戻ってこい、阿呆!」
「ちょっと、暴れすぎっスよ〜」
「お前がそれ言うか!?ちょっ!それなら離して!?」
「A位の力があれば突き飛ばせるんじゃぁないスかぁ?」
「無理だけど!?そんな力無いよ!?」
あ、もう疲れた。
え、何?二人で私の寿命縮めに来てるのかな?
「無理!本当に離して!?ぅえ、酸素!酸素が足りてない!動脈血が静脈血に苛まれる!」
「おっと、悪いスねぇ」
はぁはぁ、と息を整える。
「あー、あれ?世界ってこんなに鮮やかだったけ?あ!雪!雪だ!92℃の沸騰直前の雪だ!あ、ん?赤色の…シロクマ?シロクマがタップダンス踊ってる。しかもクラッシックでだよ。でもすごく上手だよ。選曲以外は」
「おいおい、あいつやべぇんじゃねぇか?」
「そうスなぁ。完全に彼方に逝っちゃてるスねぇ」
勘久郎と憲剛が冷たい視線を向けてくる。
―――仕方ないじゃん。本当にシロクマがタップダンスしてるんだもん。
「はぁ、全くスねぇ」
そうやって呆れたような表情を浮かべながら一本の注射器を取り出した。
え?“一本の注射器を取り出した”?
「この新薬。使ってみたかったんスよねぇ〜」
待て待て待て待て。それはやばい。
「さぁ、患者さぁ〜ん?力抜いてくださいっス〜」
「ぎゃぁぁぁぁぁああ!?それは駄目だよ!アウトだよ!黒!黒だから!」
「ほらほら〜、動いちゃ駄目っスよ〜?」
「嫌!絶っっっ対嫌!シロクマ助けて!」
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「どうスか?落ち着いたスか?」
「はい…お陰様で…」
「ったく、騒がせやがって…」
いきなり、勘久郎と憲剛に頭を抑えられる。
わしゃわしゃと雑に頭を撫で続けられる。
その時、ふと、少し、ほんの少しだけ。
ずっと昔を思い出した。
私が感じたいつかの想いは、三人の笑い声に混じって行った。
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お正月のやつ、可愛い夢主ちゃん書いて満足してしまった。
2000hitありがとうございます。
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水麟 - 紅 こべにさん» ありがとうございますっ!凄く嬉しいです!(満面の笑み) (2019年5月3日 16時) (レス) id: 65c8c71a9b (このIDを非表示/違反報告)
紅 こべに - 面白すぎませんかこういうシリアス大好きです(真顔) (2019年4月27日 6時) (レス) id: 64e65a2b60 (このIDを非表示/違反報告)
水麟 - おりんさん» ありがとうございます!嬉しいの一言です! (2019年4月1日 19時) (レス) id: 0dc0777a12 (このIDを非表示/違反報告)
おりん - 水麟さんの作品は全部好きやなぁ…(キラキラ) (2019年3月30日 11時) (レス) id: be6cccc8ca (このIDを非表示/違反報告)
おりん - え、何これメチャおもろ (2019年3月30日 11時) (レス) id: be6cccc8ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水麟 | 作成日時:2018年11月14日 16時