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桃side
桃「絶対何か変やって!」
青「望それ何回目や」
隣でそう返事をする藤井はスマホから顔を上げることはなくそう答えた。
深夜零時を回ろうかという時間帯、二人でタクシーに乗るのはずいぶんと久しぶりであった。
撮影に時間がかかってしまい、マネージャーも今日はついておらず、スタジオから優雅にタクシーで帰宅しているのだった。
通り過ぎるネオンライトに目を向けながら、車内には小さなボリュームで流れてくるラジオの音がする。
桃「なんでしげは言ってくれへんのかな」
青「俺らが頼りないからやない?」
桃「ん〜やっぱり年下には頼ってくれんのかなあ」
青「年下っていうか、淳太たちにも頼らんやん」
はぁ、とため息をつく音とプチっとスマホの電源を切る音がして、小瀧は藤井へと視線を向ける。
青「しげはさ、昔っからやけど、頼るの苦手よな」
桃「たしかにあいつすぐ自分でどうにかしようとするもんな」
青「神ちゃんが言ってたんやけどさ、しげの『頼る』は限りなくこっちの負担が少ないんやって。困ってることとかもさ、言わへんの。相談されても俺らが困らないようなことしか言わへん」
桃「負担が少ない……」
青「しげらしいっちゃらしいけどさ。申し訳なさそうに何言うんかと思ったら、構えたこっちが肩透かし食らうぐらい何でもないことばっかなんやもん」
藤井のいうことに小瀧も思い当たる節が多々あった。
眉を下げて、困ったように神妙な面持ちで話しかけられて何かと問えば確かに何てことないことが多い。
高い位置の物を取ってほしいとか、撮影の前によりたいところがある、とか。
お菓子が食べたいとか、ライブをしたいだとか、かまえだとか、そんな図々しいことはいつでも自信満々に言ってくるというのに。
本当に困っていることはなかなか口を割らないのだから。
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りく(プロフ) - ゆうみさん» ゆうみさん、初めまして!ありがとうございます^^なるだけ温かい雰囲気にしたかったので、嬉しいです。短編集の方も感想いただいていて、とっても嬉しいです!またぜひ読んでください^^ (2022年2月11日 0時) (レス) id: d55341bf94 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - 初めまして!とても読みやすくて一気に読んでしまいました!言葉一つ一つが優しくて読んでいてとても気持ちよかったです。是非他の作品も読んでみたいので、新作楽しみに待ってます! (2022年2月10日 18時) (レス) @page35 id: 44583c8f5b (このIDを非表示/違反報告)
りく(プロフ) - けーた。さん» けーた。さん、初めまして^^想像を膨らませるのが苦手で、ついつい細かく書いてしまったのですが、そんな風に言っていただけて嬉しいです。またちょこちょこ書き進めているものがあるので、良かったらぜひ、読んでください!ありがとうございます! (2022年2月9日 11時) (レス) id: d55341bf94 (このIDを非表示/違反報告)
けーた。(プロフ) - 初めましてで失礼します。こちらのお話最後まで楽しみに読ませて頂きました。描写が繊細で展開も気になりつつ最後には温かい気持ちになる素敵なお話でした(*^^*)私も愛される赤さんが大好きなので、また違うお話書かれるようでしたらぜひ読ませて頂きたいです✻ (2022年2月8日 22時) (レス) @page35 id: 857c9b8bce (このIDを非表示/違反報告)
りく(プロフ) - ナツさん» ナツさん!素敵なお話なんて、、嬉しいです、ありがとうございます^^! (2022年2月8日 20時) (レス) id: d55341bf94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りく | 作成日時:2022年2月4日 17時