漆【五虎退・極】 ページ14
あるじさまは、とってもがんばりやさんです。
確かに彼女は戦の将ではない。姫様です。
けれど、姫様には姫様なりの頑張りがあるのです。…盲目すぎるかもしれませんが。
＊＊＊＊
僕は三番目に打たれた刀です。僕が顕現した時、あるじさまは明らかにホッとした顔をなさいまし
た。隣の炉で鍛刀された鳴狐さんにはひどく怯えた顔をしていらしたのをよく覚えています。
僕と鳴狐さんのあとに、骨喰兄さんと薬研兄さんが鍛刀されました。その後、阿津賀志山突破まで、本丸には僕らのみでした。阿津賀志山を突破した日、短刀と脇差が、三条大橋を突破した日に打刀が、江戸城下を突破した日に太刀と大太刀が顕現されました。はたから見るととても異常な光景でしょう。
けれど、彼女にとっては仕方のないことだった。あるじさまは、男性が怖かったんです。僕ら短刀や脇差の方々はまだ大丈夫でしたが、打刀以上はアウトでした。なんとか壊れない信頼関係を築きあげ、他の方が来ても滞りなく回せる、と判断できたのが阿津賀志山を突破した日だったんです。
だから、あるじさまは、とてもがんばりやさんなんです。なんとかして僕らに慣れようと努力した、がんばりやさんなんです。その努力が、姫としてのものだったとしても。
＊＊＊＊
今朝、山姥切さんが僕らを呼び出して言いました。
「主に将としての自覚をつける、協力してくれ」と。
僕は、彼女に盲目です。その自覚はあります。僕にとって、あるじさまは、あくまで庇護対象なんです。
けれど、あるじさま、僕もあなたが将となるお手伝いをします。
僕は、盲目過ぎたかもしれない。ならば、盲目なまま、あるじさまを支えます。
償いになんてならないとしても、僕の力がどんなに微々たるものでも、僕はあなたを支えます。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 60人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
匿名狐(プロフ) - 夕月 刹那さん» わ！良かった！そう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございます！ (2018年5月30日 15時) (
レス) id: 19251f6155 (このIDを非表示/違反報告)
夕月 刹那(プロフ) - これ、私の好みドストライクです！次の更新が待ちきれない、、、！ (2018年5月29日 19時) (レス) id: 87fbf3b4b6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：匿名狐 | 作成日時：2018年5月23日 22時
