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▽▲▽
「すっごい泣ける話だったねー」
「うん全く泣いてなかったけどね」
「もう泣きすぎでハンカチぐしゃぐしゃ」
「ハンカチ1回も使ってないじゃん」
席に座ったままぐいーと伸びをして
へらへらと笑うA。
映画は終わり、
周りはそれぞれ感想を口にしつつ
席を立っている。
「ほら、帰るよ……って、何してんの」
僕らもそろそろ出るか、
と思って見えたのは
両手でスマホ画面を連打するA。
「映画の感想を推しのDMに送ってる」
「馬鹿なの後にして」
「やっぱり見終わった瞬間のこのクソデカ感情を伝えたくて。やっぱ推し最高すぎ〜！！」
「はい強制連行」
スマホから目を離さない彼女の腕を掴み
無理矢理立ち上がらせ、歩かせる。
「うへえっ」なんて変な声。
「……むいちろ、」
弱々しい、消えかかるような声。
思わず足を止めた。
強く掴みすぎたかな。痛いのかな。
それとも、もしかしたら──。
「ずっと座ってて腰痛い」
「僕の心配返して」
「無一郎は、もしもわたしが猫になっちゃったらどうする？」
自宅に帰るため乗った電車にて。
横に座るAを見ると、
変わらずぼけっとした顔で僕を見ていた。
15:00という中途半端な時間だからか、
車両内には僕らしかいなかった。
「……まあ、Aは猫になってもスマホ見てそうだよね。餌よりネットに食いつきそう」
「ん"ー、的確すぎて怖い」
無一郎は猫でも無愛想なんだろーな、
なんて言いながら屈託なく笑った。
初夏の西日が彼女を照らし、
床に影を落とす。
「Aが猫になっても、なんにも変わらないんじゃない？ Aはネット漬けだし、僕はお世話する。──何も、変わらないよ」
僕のこの恋心も
きっと変わらない。
「え、でも猫になったら文字打てるのかな？」
「無理かもね」
「一生人間でいます」
勉強はしたくないけれど、
推しに何も送れないのはちょっと……！
なんて頭を抱え出す。
映画の時は、
あんなにも無表情だったのに。
僕の前ではこんなにも
表情がコロコロ変わるんだ。
──これからも、僕だけがいい。
「あ、でもさ」
ふと、Aが僕の肩を叩いた。
電車が揺れると同時に
Aの瞳も揺れる。
「もしも、その子が猫になっても、一生愛したいなって子が出来たら」
「──わたしのお世話係、辞めていいからね」
そんな子が
僕の目の前にいるんだけどなぁ。
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楪 日織(プロフ) - さくらさん» さくらさん、コメントありがとうございます!! 前作も読んでいただけているなんて…全ての言葉が光栄で嬉しすぎます😭 引き続き頑張りますので、これからも応援していただけると嬉しいです~！🙌🏻 (6月16日 7時) (
レス) id: ce3facaf56 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - こんにちはｯｯ！いつも見てます！！あなたは神ですか？夢主ちゃんと見てた映画に‥そのｯｯ「例え猫でも愛してやるよ。」の台詞がｯｯ無一郎くんの台詞がｯｯこれは感激してしまってコメントしましたぁこれからもガンバってくだせぇ😭(急な江戸っ子) (6月11日 20時) (レス) @page7 id: b75e9c1e96 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：楪 日織 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kasumi88/
作成日時：2023年4月9日 19時
