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06. ページ7

▽▲▽




「わーめっちゃ見やすそうな席ー!」



映画館にて。
嬉しそうな顔をするAに
僕の頬が微かに緩むのがわかった。



「たまにはやるじゃん、無一郎」



ぐー、とふにゃふにゃした声で言い
上から目線でグーサインをするA。



「なんでそんなに偉そうなの」

「失礼しました無一郎様はいつでもデキる男です」

「本心じゃないでしょ、上げすぎで気持ち悪い」

「あ、ばれた?」



てへぺろ、と舌を出すA。
いっつもAはこんな感じだ。
軽いというか……ふにゃふにゃというか。



「まあでも、無一郎はデキる男だと思うよ。さっきもポップコーンとジュース代払ってくれたし」
「……なんで払ってくれたの?」




好きな子にお金を払わせるような男
どこにいると思ってるの?





「……まあ僕が映画誘ったんだし、僕がお金払うのは当然のことかなって」



喉元まで出た言葉を飲み込む。
そして、頭の奥に追いやる。
何も考えなかったフリ。

ちらり、とAの方を見ると
ぶどうジュースを片手に硬直していた。



「……無一郎、家に帰らなきゃ」

「は?」

「無一郎が優しいなんて……今から雨が、いや、きっと世界が終わるんだよ。帰って親に最期のあいさつをしなきゃ」

「ねえ僕をなんだと思ってるの??」












「────好き」
「返事してよっ……」




僕はこの映画について
"流行っている"としか知らなかったが
どうやら泣ける系の恋愛物語らしい。
辺りからはすすり泣く声が聞こえる。


そんな中、
目から涙が零れない僕と
ぼーっとした顔のままの君。

映画に集中しているのか、
考え事をしているのかわからない。
彼女の表情筋は全く動いていなかった。

ポップコーンの量だけは
少しづつ、されど着実に減っている。
それだけが彼女を見て、
時が進んでいると実感出来るところ。



「遅すぎるふたりの恋物語」だなんて。
僕たちにお似合いだろうか。

いや、ここはかっこつけてみてさ。
例え猫でも愛してやるよ。」とか、どう?




映画が終盤に差し掛かっても
彼女の顔が変わることもない。
一定のペースで瞬きが
行われている程度で。

……ほんと、
何考えているんだろ。


その時、
彼女の目が僕を捉えた。
唇がはくはくと動く。



「み す ぎ」



にこり、と勝ち誇った笑顔。
とりあえず、あっかんべーしてやった。

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楪 日織(プロフ) - さくらさん» さくらさん、コメントありがとうございます!! 前作も読んでいただけているなんて…全ての言葉が光栄で嬉しすぎます😭 引き続き頑張りますので、これからも応援していただけると嬉しいです~!🙌🏻 (6月16日 7時) (レス) id: ce3facaf56 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - こんにちはッッ!いつも見てます!!あなたは神ですか?夢主ちゃんと見てた映画に‥そのッッ「例え猫でも愛してやるよ。」の台詞がッッ無一郎くんの台詞がッッこれは感激してしまってコメントしましたぁこれからもガンバってくだせぇ😭(急な江戸っ子) (6月11日 20時) (レス) @page7 id: b75e9c1e96 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:楪 日織 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kasumi88/  
作成日時:2023年4月9日 19時

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