任侠には興味なし【d!】 (ページ29)

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12.感謝の気持ちページ29

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「お嬢、いかなる時でも感謝の気持ちを忘れちゃあかんよ。」

『は、はあ...』

休日の昼下がり。私はマンちゃんとバツ印のマスクの人と一緒にキッチンに立っている。

「てことで、今から組員のためにお菓子を作るめぅ！」

『は、はい〜？』

どうして突然こんなことを言い出したのか、あと、何故この幹部の人を連れてきたのかもよく分からない。

「あんな、お嬢は緊張するとか何とか言って、全然周りの人と距離を縮めないやん？それは上に立つ者として危ないと思うねん。」

図星を突かれて何も言い返せない。

『...確かにそうですね。』

「だから、お菓子を渡すくらいなら、お嬢でも出来るんじゃないかって、ね、らんらん。」

バツ印のマスクの人はこくりと頷く。
この人、よく見ると服装が軍服である。更に言うなら、腰に日本刀を携えていた。

もしや今からスパルタ料理特訓でもするのだろうか。

『あ、もしかして、お嬢ってまだらんらんと話したことない？』

『不甲斐ながら...』

「あー、だから2人共静かだっためぅね。」

『すみません...えっと、私はAAです。桃瀬屯の娘です。』

「仁部爛(ニベラン)です。よろしく。」

「よしよし、挨拶も終わったし、早速やけど作ってくめう！らんらん、材料の準備はええか？」

「もちろん。今朝採れたての物を持ってきたよ。」

『採れたて...？』

「らんらんは農業にも通じててね、野菜とか家畜とか育ててるんよ。」

「まあ趣味の範囲だけどね。」

『いやいや、それでもすごいですよ！』

「ふふ、ありがとう。」

彼は優しく微笑む。話すまでは静かで怖かったので印象がガラッと変わった。

マンちゃんやひとらんさんに教えて貰いながら、料理は順調に進んで行く。そしてついに、

『わあー！！』

「うんうん、よく焼けてるめぅ！」

紆余曲折を経てマドレーヌが完成した。

見るからに美味しそうで今すぐにでも食べたい。

『あの、1つ食べちゃダメですか...？』

「そうだね、無くなる前に食べよっか。」

「それもそうめぅ！」

味は想像してた通りの美味しさだった。

これは早くみんなに配りたい。

私たちはとりあえず食堂に組員を呼び寄せてマドレーヌを手渡しした。

とは言っても、幹部の人や親交の深い組員には個別で渡したかったので、一通り配り終えるとそれぞれの部屋を回ることになった。

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