任侠には興味なし【d!】 (ページ20)

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『だ、れ…？』

出せる全力の声で問いかける。

相手の男はエメラルド色の、凄まじく淀んだ瞳で私を捉らえて離さない。

「俺は、この前お前に助けてもらった殺し屋や。」

『助けた…？』

「ああ。」

父を殺した犯人を助けた記憶は一切ない。

絶対に何かの間違いだ。

それとも、

『私を…殺しに来たんですか…？』

父と同じ目にあうのだろうか。

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「いや、そうじゃない」

『…はい？』

「俺は、あんたに恩返ししに来たんや」

『……？』

意味がわからない。何故私はこの男に恩返しされるのだろうか。

「だってあんた言っとったやろ？もし生きてて私に会ってくれるなら、また来てくださいって。」

『っ…あ……』

違う。

思い出した。

私はあの2人が主犯だと知ってこの人を逃がしたんだ。

こんな大切なことどうして忘れていたのだろうか。

目に大粒の涙が浮かぶ。

『ゔ…あ……』

「え、ちょっと待って…そんな嫌やった？」

『ちが……』

もうどうしようもなく悲しくて、堪えることが出来ない。

あの2人に、またもや騙されそうになった。

「…」

男は私の顔を同情と軽蔑の混ぜた表情で見る。

「あんたも騙されたんだな」

『うあああ…』

声を上げて泣き始めたのを見て、流石に見つかると思ったのか、男は私の傍に寄ってあやす様に背中を叩く。

その手はとても暖かく感じた。

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『すみません…色々思い出して…つい…』

男は私の顔を見たまま何も発さない。

『貴方を逃がした後、私は貴方の依頼人に聞いたんです。そして…気づいたら、記憶が無くなってて…』

「…揉み消そうとした訳やな」

『あの…』

「なんや」

『会いに来てくれて、ありがとうございます。』

「…」

男は私の隣に腰をかける。

「もし…あんたが嫌じゃなかったら…俺を雇ってくれんか？」

『えっ』

「俺、今まであんたほど守ってやりたいと思った人おらんねん。」

熱が込み上げてくるのがわかる。

罪深いことだが、告白まがいなその言葉に思わずドキッとしてしまった。

「嫌なら…今、殺してくれ。あんたに殺されるなら本望や。」

ごめんなさい。みんな。

『貴方の名前は、なんて言うんですか？』

「鳥居…希。」

私はこの人に縋ります。

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