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彼が死んだ途端、重かった体が急激に軽くなる。
私は何も考えずに彼の元へ駆け出す。
コネシマさんが危ないと引き留めたが、今はそんなことどうでもよかった。
『…』
不思議と涙は一滴も垂れなかった。
周りの組員は号泣していたり、犯人を探すのに必死になっていたりと騒然としていた。
だけど、私は、私だけは、やけに冷静で、その様子を眺めることしか出来なかった。
ふと、シャオロンさんの目線が他所を向いていることに気づく。
視線の先には、一人の男が立っていた。
シャオロンさんはその男に向かって頷く。
男は頷いたのを見て、その場から離れだす。
『…っ!?!?』
その手に握られた遠距離銃を私は見逃さなかった。
他の組員も見たのだろうか、次第に逃げる彼を追う者が現れる。
シャオロンさんは何事もなかったかのように、その連中に混ざった。
その恐ろしさに、私はおぞましい物でも見ているかのような不快感を覚えた。ここから離れないと全身が恐怖に支配されてしまいそうだ。
「A!危ないから乗れ!!!」
コネシマさんが手を伸ばしてきた。
大きくて不器用なその手をしっかり掴み、私はコネシマさんの車に乗り込んだ。
「大丈夫やったか??」
『…ぁ……』
「………とりあえず、俺の所に居れば心配ないから、安心し。」
『すみません…』
「ええよ。そりゃ誰だってそうなるわ。」
それ以外は何も言わなかった。
でも、今の私にとってはそっちの方がありがたかった。
窓の外から、騒ぎ立てる組員をぼーっと眺める。
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視線の隅には、大先生の近くに寄って何かを話すシャオロンさんが映る。
2人とも口元は恐ろしい程笑っている。
ああ、そっか、2人は、私の父を殺したかったのか。
あまりの恐怖にもはや何も考えられなかった。
「殺せ。」
でも、そう、シャオロンさんが言っていたことだけ、はっきりとわかった。
もしや、証拠隠滅のために、あの銃を持った男までも殺されてしまうのか。
それだけは絶対にダメだ。
『あの、コネシマさん。』
「…なんや?」
『私も犯人を追跡したいです。父が殺されて1人だけ何もしない訳にはいきません。』
「もう大丈夫なんか?」
『お願いです。』
「…わかった。」
彼は迷わず車を出発させた。
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作者名:らあ。 | 作成日時:2022年11月7日 21時