【d!】色は思案の外【zm】 (ページ5)

今日:9 hit、昨日:20 hit、合計:14,031 hit

3.不可能ページ5

・

ここに閉じ込められてから1週間、逃げ出せずにいた私には二つ分かったことがある。

まず一つは、ここから抜け出すことは絶対に無理だということ。手錠足枷は恐ろしい程頑丈で、どれほど身体を打ち付けてもビクともしない。更には内側からのドアの施錠、ゾムの監視の目、この圧倒的な彼の部屋という檻の存在に、私はどうすることも出来なかった。

そして二つ目、これは意外な事だが、彼は私が逃げ出さないと分かれば案外優しかった。食料は毎日３食、風呂すら入れてくれる為、それ程不自由な生活ではなかった。まあ、私の動きが自由になる時は必ず彼の監視があるけれど。

そんな訳で何となく何もせず1週間過ぎてしまった訳だが、そろそろ私もどうしたら良いのか路頭に迷い始めたのだ。

「今帰ったで、ええ子にしてたか？」

『...。』

「まあ、ええか。Aが分かってくれたみたいで俺は嬉しいで。」

そう言って抵抗出来ないのをいいことにいつも頭を撫でてくる。優しく、割れ物でも扱うような撫で方に、いつも私は調子を狂わされる。

「せや、Aは苦手な食べ物とかある？」

『...ないよ。』

「よかった。じゃあこれ、あげるわ。」

『なにこれ......』

「任務中に知らん女から貰ったんやけど要らないから、食べて。」

『やだ、変なもの入ってそうじゃん。』

「変なもの？」

『それってゾムのこと好きだからあげたんでしょ、きっと。』

「せやろうな、でも、なんでそれで変なモノが入るん？」

『いるじゃん、好きな人にお菓子渡す時に自分の血液とか髪とか爪とか混ぜる人。』

「でも俺、Aにあげる料理で自分の一部入れたことないで。」

『いやだから』

「あっ、まさか、Aは俺の一部が欲しかったん？気づかんかったわー、それで、何が欲しいん？血？爪？それとも俺のせ」

『あーー！！！それ以上言わないで！！』

「ちょ、A、声！！」

『あっ』

よからぬ事を言いそうになってたあまり大声を出してしまった。流石にゾムもマズいと思ったのか咄嗟に私の口を手で塞ぐ。

「バレたらどうすんねん、Aが危ないんやぞ。」

『んー......！』

「静かにしいや」

至近距離で彼の顔が目に映る。
険しい表情を浮かべた彼には、どこか悲しげな様子が見えた気がする。

そんなこともつかの間、段々とこちらの部屋に誰かが歩いてきている音が聞こえた。

「お願いやから黙っといて。」

ゾムはそう言い残して扉へ向かった。

・