20 最後の決断 ページ23
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「逮捕されたで。実行犯も、Aの母親も。とりあえず10年は確実に牢獄に居るから安心しいや。」
『そ、か、よかっ、た.....。』
安心感でぺたりと床に座り込んでしまう。
「これでようやくAは命の危険が無くなった訳やけど、この先、どうしたい？」
ゾムは私に淡々とそう告げた。
あれ以来鎖の一つも付いてなかった私はいつでも逃げ出すことが出来たはずなのに、どうしてかずっとここに留まっていたのだ。決断をしっかり下したいからなのだろうか。私には分からない。
『私は...やっぱりフィオナおばさん達の元に帰る。まだまだ返せてない恩が多すぎるからさ。ゾムには守ってもらったけど、それでもやっぱり帰りたい。』
「そう言うと思った。
ええよ。Aの好きにして。俺はどんな決断を下そうともAを愛しとるから。」
『ありがとう。ゾム。』
「...じゃあ、門まで送ってくから、行こか。」
『うん。』
あそこまで執着していたのにこんなにも呆気なく帰ることを許すのを見る限り、やはり彼は私の事を守りたい一心だったのだと実感させられる。
ゾムに手を引かれ、私はゆっくりと城塞の外へと歩き出した。
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正門前まで来ると、私の帰りたいという気持ちはどうしてか薄れていった。フィオナおばさんとセージおじさんに会えるのは本当に喜ばしいことだし、この日をずっと夢見て待っていたのも事実だ。でも、でも何故か、私は何処かでゾムの存在を求めている。もう会えないと思うと心の奥がギュッと苦しくなる。
「じゃあ、元気でな。」
『.....うん、じゃ、ね。』
「...なんで、なんでそんな顔するん？ようやく願いが叶って嬉しいやろ？」
『うん...うれしい、と思う。うん、だって.....』
「ホンマに帰りたいん？」
『...........ッ、うん。ごめん。じゃあ、元気でね。』
この気持ちは押し殺さないと、皆に迷惑をかけてしまう。
私はゾムに深く一礼して、そのままもう姿の見えるフィオナおばさんの元へと歩き始めた。
フィオナおばさんは私を見るなり駆け寄って抱きしめてくれる。会いたかった、と全身で感じるほど暖かさを感じるのだが、どこか様子がおかしい気もする。
『お、おばさん.....？』
「ゾム様の所に戻りなさい。」
『え。』
フィオナおばさんの顔は真剣そのものだった。
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作者名：らあ。 | 作成日時：2023年5月6日 12時
