〜オリンマリス(2)〜 ページ35
「一年前から私は、このオリンマリスの生態研究をしているんだ」
「え…!!」
『…』
淡い光りから目を逸らさず言うシダンに白雪は驚く。
「冬にこうして、わずかに光る種をつけ集まりこんな光りを見せる。だと言うのに参ったもんだ。毒素を作るとは知らなかったな……」
「ーーー…」
シダンはつい最近まで、原因がこのオリンマリスであることに気づきもしなかったことに、悔しそうにしていた。
「この植物の…オリンマリスの種は途中の雪解け水の流れの中では光ってさえもいませんでした。
この場所から落ちて流れ出た先の洞窟で、地熱によって温められた水に浸かった事で毒素を出し、光の成分も溶けだして…それが光の霧になっていたんだと思います」
「へー…」
『あの短時間でよく分かったね、白雪』
シダンは白雪の見解をただ黙って聞いているだけだったが、膝に置かれた左手に力が入った。
「ー白雪君、この場所の事は…報告しないでほしい…!!」
「……!!」
「今回のような事は条件が、重ならければ起こらない。今後、対策もうてるだろう。だが…病の原因の植物なのだと初めに記録されればもう、国に広める事は出来なくなる」
言いたいことは分かるが、それで本当に良いのだろうか。自分には植物の知識は全くないので、発言する権利はない気がしてオビを見てみる。
「お嬢さんに任せよう」
『そうだね』
オビも困ったように言ったので、クレア見守るようにシダンの話の続きを聞いた。
「オリンマリスが見せてくれるかもしれない景色を…私は、諦めたくはない。このリリアスや白銀の道々にこの灯りを咲かせる事が出来れば……それは鮮やかな花も同じだろう」
シダンの目にはオリンマリスの未来が見えているのだろうか、でもそれはクレアも目を閉じればその光景が浮かんでくる気がした。
「そいつは実現したらすごい事なのかい?お嬢さん」
「……うん、そうだね。すごく」
白雪の目にも見えたのだろうオリンマリスが、リリアスやウィスタリアに咲く幻想が。
「それでもシダンさん、報告はします」
シダンの顔は悲しみに崩れそうになるのをどうにか、堪え唖然としながら、白雪の言葉を聞いていた。
「私達は一度でも偽れば、誰の力にもなれなくなります。シダンさんは正々堂々と、オリンマリスを守って下さい」
ああ、白雪の言葉はいつも真っ直ぐだ。クレアは、安心したように、オリンマリスをもう一度眺めた。
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クレア(プロフ) - 奏萌さん» 約2ヶ月掛かってやっとこのブックが埋まったわー。 (2015年10月23日 23時) (レス) id: dd228be703 (このIDを非表示/違反報告)
奏萌(プロフ) - 萌も更新しなきゃ(笑) 明日はのぶくん生誕祭 (2015年10月23日 22時) (レス) id: 909270ad00 (このIDを非表示/違反報告)
クレア(プロフ) - 奏萌さん» んー、まぁまだまだ痛いけどがんばる笑 ありがとーお待たせ! (2015年10月23日 0時) (レス) id: dd228be703 (このIDを非表示/違反報告)
奏萌(プロフ) - 大丈夫?!久々の更新だね!待ってたよ (2015年10月23日 0時) (レス) id: 909270ad00 (このIDを非表示/違反報告)
クレア(プロフ) - 水琴鈴さん» たぶん、また更新するから笑っ (2015年10月22日 22時) (レス) id: dd228be703 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クレア | 作成日時:2015年8月26日 19時