〜閉門(2)〜 ページ14
しかし、イザナが白雪の言葉を聞き入れてくれた事には驚いた。それに…
「今ここで王城に仕える薬剤師の言葉を捨て置いてどうする?」
そこまで言うからには、イザナは白雪を少なからず邪険に扱うつもりはないようだ。元々、言葉に棘がある言い方はするが氷のように冷たい心は持っていない。
などと考えていると、塔に着いたようでイザナは手綱を後ろに引っ張ると白雪が小さく呻く声が聞こえた。
「すっ、すみませ…」
白雪の謝罪を聞くまでもなく、イザナはひらりと馬から降りたのを見て、クレアも愛馬から軽々と降りる。
「間も置かず、俺の問いに答えたのは初めてだな。降りなさい」
塔に向かっている最中に何か、大切な話をしていたのかイザナは満足そうに白雪に手を差し伸べたのを、白雪は遠慮がちに手を取り馬から降りる。
クレアはイザナと自分の馬の手綱を両手に持ち、少し歩けば兵士が二人、こちらへと来るとその二人に手綱を預けた。
「リリアスの外壁全ての門を封鎖する!?関所もですか!?しかもすでに通達されたとは…」
塔に通された三人は、リリアスの管理者の男に報告をすると目を開いた。その横には、ハキがイザナの言葉を静かに聞いている。
「状況は今、この者が話した通りだ」
「……幾つか申し上げたいが、一つだけ。何故、我々がいない場で決めてしまわれたのです」
「無論、リリアスを取り仕切る総兵の席にお前がいるから下した判断だが、異論があれば聞くマキリ」
「……」
イザナは簡単に封鎖を許可をしたわけではない、信頼が置けるお前がいるからこそ下した判断だと、遠回しに言われたマキリと呼ばれた男は、返す言葉もなく黙ってしまう。
「…ハキ!何を笑うか」
「笑っていません、兄様」
実際にハキは、くすりとも笑っていなかったのだがマキリは照れ隠しに兄と呼んだハキに当たった。勿論、妹のハキは慣れた様子で否定した。
「昨日のご命令での調査ですが、殿下。現在のところリリアスの外で同様の症状は報告されていないようです」
「そうか」
淡々とした会話に、白雪はイザナが先回りして話を通していたことに驚きを隠せないでいた。
「病も夜明けを待たず、次々と到着する荷を積んだ馬車も人も、早急にどうにかせねばなりませんな…」
「ーー申し上げます!!」
マキリの会話もそこそこに、一人の兵が慌ただしく声をあげた。
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クレア(プロフ) - 奏萌さん» 約2ヶ月掛かってやっとこのブックが埋まったわー。 (2015年10月23日 23時) (レス) id: dd228be703 (このIDを非表示/違反報告)
奏萌(プロフ) - 萌も更新しなきゃ(笑) 明日はのぶくん生誕祭 (2015年10月23日 22時) (レス) id: 909270ad00 (このIDを非表示/違反報告)
クレア(プロフ) - 奏萌さん» んー、まぁまだまだ痛いけどがんばる笑 ありがとーお待たせ! (2015年10月23日 0時) (レス) id: dd228be703 (このIDを非表示/違反報告)
奏萌(プロフ) - 大丈夫?!久々の更新だね!待ってたよ (2015年10月23日 0時) (レス) id: 909270ad00 (このIDを非表示/違反報告)
クレア(プロフ) - 水琴鈴さん» たぶん、また更新するから笑っ (2015年10月22日 22時) (レス) id: dd228be703 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クレア | 作成日時:2015年8月26日 19時