〜心の底の気持ち(8)〜 ページ49
しかし、げんなりするのは、まだ早かった。薬の効果が切れないミツヒデは事あるごとに、あの固い話し方で、ゼンに接していった。
それはクレアも同じで、木を移動手段に使っていると注意されそして、横抱きにされ降ろされるという珍事件が発生した。
『もぉーやだー…』
「戻らん…!!!」
「大丈夫ですか、二人とも」
ゼンの私室では、ゼンだけではなくクレアまでもが項垂れる始末。そんな二人をオビが慰めていた。
「どうだかな……まぁ調子は狂うかもな」
『狂うかもな、じゃなくて狂ってるてばー。毎日毎日、木に登ってたら、手を差し出されたり、挙げ句に横抱きで降ろされるわで、あたしは木に登って降りられなくなった猫じゃないってばー』
クッションに顔を埋め、ぎゃあぎゃあと騒ぐクレアにオビも苦笑するしかなかった。
「オビおまえ、少しの間いてくれ」
いきなりのゼンの申し出にクレアは、クッションから顔を上げると頭をぶんぶんと横に振った。
『だめだめだめだめ、だめー!オビはあたしのなんだから、ゼンには貸してやんないー!』
「何が貸してやらないだ、俺の伝令役でもある」
むっとしたクレアは、オビにしがみつくと、子供のように駄々をこねる。
『あたしのだもんー!』
「だったら、一緒にいればいいだろうが」
「…なんか、俺を取り合う二人の姿とか、いまいち想像出来て無かったんですけど、意外と主が大人で驚きました」
しがみついてくるクレアの頭を笑いながら、撫でながらゼンにそう言えば、どういう意味だオビと睨まれた。
「…まぁ、ここにいるのはいいですけど。じゃ、歌でも歌いましょうか」
「それはいらん。おまえ何か、歌えるのか…」
「歌えますよ」
さらりと言ったオビの傍らでは、いつの間にか安心しきった様子で、丸まって眠るクレアの姿があった。
「…寝たな」
「ですね、どうします?」
「どうします?じゃないだろ。お前の部屋なりこいつの部屋なり連れて帰れ。ここに置かれてると眠れないだろうが」
それもそうか、と納得はするが幼き頃から共に育ってきたこの二人は、一緒に寝ることなんて何ら問題はないんじゃないだろうかと考えた。
「…幼い頃は、そうだったかもしれんが。今は、お前が居るだろう?」
だから、怖い顔をするなと、我が主は苦笑して自分の眉間に皺が寄っていたことに、今気づいた。
「はは、すいません主。…よっと、じゃあ連れて帰りますね。」
「ああ、そうしてくれ」
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クレア(プロフ) - ちよりっこさん» トロウなぁー、まぢで妬かせるかー、んー、もはや夢主なら一緒に手伝っちゃいそうなんだけどな笑 (2015年7月22日 1時) (レス) id: dd228be703 (このIDを非表示/違反報告)
ちよりっこ - クレアさん» 早いね?!トロウちゃん楽しみ! (2015年7月22日 1時) (携帯から) (レス) id: 3b0d60b9f1 (このIDを非表示/違反報告)
クレア(プロフ) - ちよりっこさん» ありがとうー!【6】に移行したよー! (2015年7月22日 1時) (レス) id: dd228be703 (このIDを非表示/違反報告)
ちよりっこ - クレアさん» オビがアニメでやったからかな?コメント増えてるー!おめでとー! (2015年7月22日 1時) (携帯から) (レス) id: 3b0d60b9f1 (このIDを非表示/違反報告)
クレア(プロフ) - あずきさん» 喜んで頂けてこちらも嬉しいです!読んでいただいてありがとうございます! (2015年7月21日 23時) (レス) id: dd228be703 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クレア | 作成日時:2015年5月17日 0時