〜王城解放日(11)〜 ページ40
『姫の騎士などに、わたくしの気持ちなどわかるまい』
「守りたい、気持ちは分かっている」
『何を、偉そうに…!』
短剣を握りしめるクレアにゼンは、発破をかける。
「さぁ、参られよ。この剣で受け止めてみせよう」
騎士に扮するゼンの言葉に、クレアは王子に恋心を抱いてしまった側近として、ゼンへとぶつかっていく。
騒然としていた客も、ゼンとクレアの軽やかな剣舞に感嘆の声を上げる。
「「………」」
約二名、その光景に頭を抱えていた人物が居ることを今はまだ、知らない。
「あ、あの?」
「お、おい台本と違うだろ!」
「ごめんなさい、薬剤師さん…約束を守れないところだったわ」
舞台袖では、一時退場した白雪とクレアの加えた脚色によって台本が変わってしまい、出番の無くなった王子も一時退場していた。
「それにしてもやるわね、あの衛兵さんとあの子!」
「上から飛ぶとは…で、でもあの子剣舞なんて出来んの?」
「あの子の事なら、心配いらないですよ。とは言え、あんた方の舞台だ。二人が戻ったら、すりかわって今度こそ王子と騎士との剣舞をして下さい」
そう言って笑うオビは、先程のクレアの言った台詞が頭から離れなかった。
ー『姫の騎士などにわたくしの気持ちなどわかるまい』ー
これには深い意味でもあるのか、それともクレアのいつもの言葉遊びなのだろうかと、オビは複雑な気持ちになった。
「お疲れ、クレア嬢。はい、これ」
『わ、前見え…ない』
劇が無事、終わりを迎えオビは、姫役の女性達に礼を言われていたクレアの髪にさっと布を被せた。
「今度はクレア嬢が見世物にされるよ」
『見世物って…まぁ、ありがとう、騒ぎにならなくて済んだよー』
被せてもらった布をなおしながら、ゼンと白雪が何処かに歩いていくのを黙って見送った。
『少しだけ二人きりにしてあげようねー』
オビも二人の後ろ姿を見てから、クレアの様子を見た。
陽が落ちる前に、丁度良くクレアの髪を隠せた。…というよりも、先程のアドリブの台詞が頭から離れない。
本人は至って変わりがなく布が風で飛ばないように右手で押さえながら、自分の隣を歩いている。
「クレア嬢ってさー、主の事が好きだった?」
『…………………ぷッ、何それ。それは何を根拠…って、あぁ、さっきの?』
何を言い出すんだ、とばかりに歩みを止め布が落ちないようおさえながらオビを見上げた。
『好きだよ、ずっと昔から』
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クレア(プロフ) - ちよりっこさん» トロウなぁー、まぢで妬かせるかー、んー、もはや夢主なら一緒に手伝っちゃいそうなんだけどな笑 (2015年7月22日 1時) (レス) id: dd228be703 (このIDを非表示/違反報告)
ちよりっこ - クレアさん» 早いね?!トロウちゃん楽しみ! (2015年7月22日 1時) (携帯から) (レス) id: 3b0d60b9f1 (このIDを非表示/違反報告)
クレア(プロフ) - ちよりっこさん» ありがとうー!【6】に移行したよー! (2015年7月22日 1時) (レス) id: dd228be703 (このIDを非表示/違反報告)
ちよりっこ - クレアさん» オビがアニメでやったからかな?コメント増えてるー!おめでとー! (2015年7月22日 1時) (携帯から) (レス) id: 3b0d60b9f1 (このIDを非表示/違反報告)
クレア(プロフ) - あずきさん» 喜んで頂けてこちらも嬉しいです!読んでいただいてありがとうございます! (2015年7月21日 23時) (レス) id: dd228be703 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クレア | 作成日時:2015年5月17日 0時