第27話〜王城開放日(1)〜 ページ30
「第二王子ゼン殿下、帰城されました」
タンバルンから戻ったゼンが戻ったのは、陽が暮れてから少し時間が経ってからであった。
「俺は、兄上のところに行ってくる」
『ならあたしも、行くよ。…迷惑かけただろうし』
「そうか、なら一緒に来い」
白雪やミツヒデ達とはその場で解散し、ゼンと共にイザナが居るであろう場所へと向かった。
「お前か…それにクレアもか」
「はい、戻りましたーーー兄上」
『はいイザナ様、その…』
イザナは剣を振りながらそう言えば、クレアはおずおずとイザナに声を掛ける。
「おかえり、ゼンにクレア。ーーー無事で何より」
ふと剣を下ろしたイザナは二人へと労いの言葉を掛けるとそのまま私室に戻ってしまった。
『え、兄様…怒ってる?』
「さぁな、そうでもないと思うが。用は済んだんだ、早く戻ってお前も休めよ、クレア……あ、それとお前、不安になると兄上の事、兄様って呼んでるぞ」
じゃあな、とゼンも疲れているのかそそくさと、その場を後にし、クレアは一人ぽつんと残された。
『……ロナとユジナの移ったのかなー…』
自嘲してからクレアも、自分の私室に帰って疲れたこの体を休ませることにした。
「王城開放日?そうか、もうすぐだったな」
「はい、数年に一度、市民に王城の一画を開放する行事です」
執務室では、兵が数日後に行われる王城開放日について説明をしに来ていた。
「いくつか催しがあるそうですよ」
「恒例、騎馬行進…劇団招致」
『そういや、今年もあるんだよねー、恒例ってことは』
兵から渡された資料をゼンと共に覗くクレアは、思い出したように呟く。
「はい、ゼン殿下にもお役目がございます」
「…ああ」
先程の資料とは別にもう一枚手渡された資料を見たゼンは、思い出したように短く返事をした。
「わかった、下がっていいぞ」
胸に手をあて敬意を表す動作で礼をした兵は、静かに執務室から部屋を出た。
「…当日は王子然としててくれよ」
「む」
「開放場所は限られてるがゼンも行動範囲を狭めるように」
一応、注意を促したミツヒデに聞いているのか聞いていないのか、よく分からない短い返事にミツヒデも少し呆れた表情だった。
『言うだけ無駄だと思うよ、ミツヒデ。』
「わかってるさ、そんな事は。一応だ」
『やろうと思えば、変装してでも何処か行きそうだし』
「ありえる…」
それが実際に実行されるとは、この時は誰も考えてもみなかった。
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クレア(プロフ) - ちよりっこさん» トロウなぁー、まぢで妬かせるかー、んー、もはや夢主なら一緒に手伝っちゃいそうなんだけどな笑 (2015年7月22日 1時) (レス) id: dd228be703 (このIDを非表示/違反報告)
ちよりっこ - クレアさん» 早いね?!トロウちゃん楽しみ! (2015年7月22日 1時) (携帯から) (レス) id: 3b0d60b9f1 (このIDを非表示/違反報告)
クレア(プロフ) - ちよりっこさん» ありがとうー!【6】に移行したよー! (2015年7月22日 1時) (レス) id: dd228be703 (このIDを非表示/違反報告)
ちよりっこ - クレアさん» オビがアニメでやったからかな?コメント増えてるー!おめでとー! (2015年7月22日 1時) (携帯から) (レス) id: 3b0d60b9f1 (このIDを非表示/違反報告)
クレア(プロフ) - あずきさん» 喜んで頂けてこちらも嬉しいです!読んでいただいてありがとうございます! (2015年7月21日 23時) (レス) id: dd228be703 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クレア | 作成日時:2015年5月17日 0時