〜偽装見合い(4)〜 ページ8
「はい、殿下」
『ではショールをお持ちします、セイラン様』
「……ありがとう」
ゼンの見合い相手とは、側近である木々であった。
「今日は頼む、木々」
「わかってる」
ショールをクレアへと預けながら、小さな声で会話をしながら城の廊下を歩いていれば、城の者達の噂話が耳に入る。
「ゼン殿下が今日、見合いをされているらしい」
「へぇ!本当か。お相手は?」
「それが伏せられているらしくてな」
「殿下が妃探しを?」
木々との見合いだということがばれないよう、人目に触れないように細心の注意をしながら、三人は庭へと続く廊下を歩いて行く。
「ーーおお……」
「私語は慎め」
庭へと続く扉の前ではミツヒデとオビが、後ろに腕を組んだ状態で出迎えてくれた。
「おまえら控えていろ。誰も通さなくていい」
「わかりました」
『セイラン様、お庭に出向かれるならこちらは、お返ししておきます』
ふわりと木々へそれを返せば、こちらの方が可愛いですよとショールを少し腕の方へとずらしてやれば、満足そうに笑う。
『たまにはそういう格好も似合うよ、木々』
「ありがとう、でも次はクレアの番かもね」
『それはもう、ないって木々も知ってるでしょー』
意味ありげに笑いながら、木々とゼンが庭へと出るのを見送った。
「さっきのあれ、どういう意味だい?」
少し時間を置いてから自分達も、庭へと出ればゼンと木々の後ろ姿が少し遠くに見えた。そんな時、オビが先程の会話が気になったのか、右側にいるクレアを見た。
『木々が言ったことに対しての、あたしの返答の事?』
「そーそー。旦那も気になりますよね?」
「ん?あ、ああ。そうだな」
木々の後ろ姿を見ていたのか、反応が少し遅れたミツヒデにクレアは、からかうように笑う。
『ミツヒデは今、それどころじゃないよねー』
「な、何がだよ。」
『木々のドレス姿に、見とれてたくせに。珍しいもんね木々がドレス着るなんて』
なんとか話題を変えようとミツヒデが、慌ててオビへと話を聞き返した。
「……オ、オビ。何が気になるんだ?」
「聞いてなかったんなら、返事しないで下さいよ。だから、さっきの木々嬢とクレア嬢の会話の話ですよ」
『大した話じゃないってー』
オビからそう聞けば、ミツヒデはすぐに思い当たる事があるのか、そのまんまの意味だよ、そのまんまと笑った。
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ありす(プロフ) - 何度も読み返してるのが私だけじゃなくてよかったです!久しぶりに読み返しにきました!ずっと更新続いてるのが嬉しいです!!ありがとうございます:)♡ (2022年8月31日 14時) (レス) @page45 id: 331930e50a (このIDを非表示/違反報告)
☆(プロフ) - 最近この小説を知り、一気読みしてしまいました…!素敵な物語をありがとうございます🙇♀️お忙しいと思いますが、いつかふと思い出して更新して頂けたりすると嬉し泣きます😌 (2022年8月6日 18時) (レス) id: f76d03d4ec (このIDを非表示/違反報告)
りんごにゃん - 何度も読まさせてもらってます!!更新嬉しいです!!ずっと楽しみにしてましたー!!新刊も出て更新大変だと思いますが、頑張って下さい!続きの更新たっても楽しみにしてます!主人公とオビの絡みが特に好きです!また4人との絡みもとても自然で読むのが楽しいです! (2021年6月8日 23時) (レス) id: b4b1143c3c (このIDを非表示/違反報告)
ぺこぱ(プロフ) - この作品に出会えて良かったです!!お忙しいとは思いますが更新お待ちしています。がんばってください!! (2020年9月15日 14時) (レス) id: 7095aaaef1 (このIDを非表示/違反報告)
はまゆ。(プロフ) - 何周目かわからないですが見返しました!いつ読んでもとても素敵なお話です。応援してます。 (2020年5月25日 3時) (レス) id: a7b82f401c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クレア | 作成日時:2016年2月8日 1時