〜偽装見合い(3)〜 ページ7
「これはハルカ侯どの。クレア、殿下とハルカ侯にお茶を持って来て貰えるか?」
こちらへと歩み寄りながら、クレアをこの場から逃がす為に二人に茶を出すように頼んだ。
「構わん、用はこれだけなのでな」
『…………』
その言葉に一刀両断されてしまったクレアは大人しくハルカ侯の隣へと、静かに戻る羽目になった。
「ーともかく、いずれにせよ何もしない訳には参りません」
ゼンは部屋に入ってきたミツヒデと目が合えば、ミツヒデは助けに来たぞとばかりに、片目を瞑ってゼンに合図した。
「参らなかろうが夜会はやらん!その気もなくやるわけにもいくか!」
「ゼン殿下はそう仰るだろうと、イザナ殿下も仰っておられたので夜会は無理にとは申しません」
「え?」
てっきり押し切って来ると思ったゼンは、素っ頓狂な声を出してしまう。
「ですが、どなたかお一人だけでも会って頂きます。殿下が婚姻を放棄していない事を示して頂かねば。それはお分かりでしょうな」
「……一対一の見合いなんて尚の事…」
恐る恐る見合い相手のリストを覗くゼンは、ある人物の名前を見つけ目を見開けば、ゼンの横に立ったミツヒデもその名前に目をぎょっとさせた。
「ーー…兄上も目を通したと言ったなハルカ侯……。ここに名のある者は皆、妃としての候補にあるという事か?」
「無論、横並びにというわけではありませんが…………殿下、一つ言っておきますが昔のような子供騙しはもうなさりませんように」
『…………あははは』
突然隣で苦笑したクレアに何がおかしいと、一睨みするとクレアは、背筋をしっかり伸ばし、いえ、何も。と、しらを切った。
「よろしいですか、殿下」
「……会うのは一人だけでいいと言ったな?」
そして、緊急で執り行われる事となったゼンの見合いは城中の噂になったのだった。
見合い相手を決めた後日、正装へと身を包んだゼンは見合い相手の到着を待っていた。
『ねぇ、ゼン』
「……なんだ」
『この前、ハルカ侯爵が言ってたあれ、覚えてる?』
同じく正装で、見合い相手の到着を待っているクレアは小さな声で先日のハルカ侯爵との会話についてゼンへと尋ねた。
「ハルカ侯が?ああ、あれか」
ゼンも思い出したかのように苦笑すれば、今は昔話をしてる場合じゃないと頭を横に振ると、すぐに見合い相手が城へとやって来た。
「ーーでは、こちらへ」
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ありす(プロフ) - 何度も読み返してるのが私だけじゃなくてよかったです!久しぶりに読み返しにきました!ずっと更新続いてるのが嬉しいです!!ありがとうございます:)♡ (2022年8月31日 14時) (レス) @page45 id: 331930e50a (このIDを非表示/違反報告)
☆(プロフ) - 最近この小説を知り、一気読みしてしまいました…!素敵な物語をありがとうございます🙇♀️お忙しいと思いますが、いつかふと思い出して更新して頂けたりすると嬉し泣きます😌 (2022年8月6日 18時) (レス) id: f76d03d4ec (このIDを非表示/違反報告)
りんごにゃん - 何度も読まさせてもらってます!!更新嬉しいです!!ずっと楽しみにしてましたー!!新刊も出て更新大変だと思いますが、頑張って下さい!続きの更新たっても楽しみにしてます!主人公とオビの絡みが特に好きです!また4人との絡みもとても自然で読むのが楽しいです! (2021年6月8日 23時) (レス) id: b4b1143c3c (このIDを非表示/違反報告)
ぺこぱ(プロフ) - この作品に出会えて良かったです!!お忙しいとは思いますが更新お待ちしています。がんばってください!! (2020年9月15日 14時) (レス) id: 7095aaaef1 (このIDを非表示/違反報告)
はまゆ。(プロフ) - 何周目かわからないですが見返しました!いつ読んでもとても素敵なお話です。応援してます。 (2020年5月25日 3時) (レス) id: a7b82f401c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クレア | 作成日時:2016年2月8日 1時