〜朝の日課、大晩餐会(10)〜 ページ45
「あのさ、主とミツヒデさんがたまに紅茶に砂糖ガバガバいれて飲むんだけど、その時の木々嬢の顔がもうね」
「ふんふん。二人共甘党ですもんね。甘党と言えば、クレアさんもやっぱり、お砂糖ガバガバいれてるのかな」
トマトを言われた数、切ったクレアは次は何切ればいい?と喜々としてフライパンを振るオビの横に来れば、油飛ぶよ、と注意しては出来上がった料理を更に盛り付け、今度は玉葱を掴むとクレアにぽーんと軽く投げる。
「とりあえず、少し基本の包丁の扱いは出来てきたし、レベルアップね。…まぁ、見ててよ」
「それはレベル上げすぎじゃ…」
「いいからいいから、それに…」
「しー…」
軽く投げて寄越された玉葱を難なく手中に収め、また新しく掴んだ玉葱を使って、オビは微塵切りを披露する。少し自信がついたクレアは目を輝かせて凄いと喜んでいるが、白雪はある心配をするも悪戯声で小さく止めれば、知りませんよ、もう。と白雪は再度作業を進める。
案の定、途中からクレアの悲鳴交じりの声が厨房に響くと、オビと白雪は思わず顔を見合わせて笑いつつ、涙を流すクレアの元へと歩み寄る。
『玉葱切ったら涙が止まんないし、痛いぃ…』
「水で冷やしながらってのも、あるけど滑っちまうし危ないだろうからね」
「玉葱を切った時に出る硫化アリルっていう成分が、目を痛くする原因なんですけど、どうも水を流しながらすると、玉葱の栄養分も流れてしまうみたいで」
何にせよ、我慢だよクレア嬢。そんなに辛いなら変わろうか?と言えば、…やる、最後まで。とちらりと顔を見上げれば必然的に潤んだ瞳で見つめてくる彼女の溜まった涙を親指で拭ってやる。決して邪な感情が出ていないと言えば嘘になるし、普段なら腰を抱いてしまう所だが、先程彼女に集中しろと言ったばかりなので、自重する。
「よし出来た!」
『もう玉葱は切りたくない』
「包丁捌き悪くなかったよ、次回あるとしたら、今度は一連の流れをやってもいいんじゃないかい」
次回あったら、ね。と出来上がった料理を眺めると鼻を擽るいい匂いに、前のめりになりつつ、エプロンの紐を解いていく。
「んじゃ、薬室長どのに助手に呼ばれちゃったリュウ坊のとこ包んで届けて、俺達の分運びますか」
『エプロン助かりました、汚してはないと思うけど…』
借りたエプロンを返しつつ、カートにちゃっかりと酒を乗せて料理を運ぶ準備を整えた三人は、厨房から目的の場所へと歩みを進めた。
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ありす(プロフ) - 何度も読み返してるのが私だけじゃなくてよかったです!久しぶりに読み返しにきました!ずっと更新続いてるのが嬉しいです!!ありがとうございます:)♡ (2022年8月31日 14時) (レス) @page45 id: 331930e50a (このIDを非表示/違反報告)
☆(プロフ) - 最近この小説を知り、一気読みしてしまいました…!素敵な物語をありがとうございます🙇♀️お忙しいと思いますが、いつかふと思い出して更新して頂けたりすると嬉し泣きます😌 (2022年8月6日 18時) (レス) id: f76d03d4ec (このIDを非表示/違反報告)
りんごにゃん - 何度も読まさせてもらってます!!更新嬉しいです!!ずっと楽しみにしてましたー!!新刊も出て更新大変だと思いますが、頑張って下さい!続きの更新たっても楽しみにしてます!主人公とオビの絡みが特に好きです!また4人との絡みもとても自然で読むのが楽しいです! (2021年6月8日 23時) (レス) id: b4b1143c3c (このIDを非表示/違反報告)
ぺこぱ(プロフ) - この作品に出会えて良かったです!!お忙しいとは思いますが更新お待ちしています。がんばってください!! (2020年9月15日 14時) (レス) id: 7095aaaef1 (このIDを非表示/違反報告)
はまゆ。(プロフ) - 何周目かわからないですが見返しました!いつ読んでもとても素敵なお話です。応援してます。 (2020年5月25日 3時) (レス) id: a7b82f401c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クレア | 作成日時:2016年2月8日 1時