〜朝の日課、大晩餐会(8)〜 ページ43
あと少しで、と頷く白雪にリュウも軽く頷けば、オビがいい事を思いついたとばかりに大きく頷いた。
「そっかそっか!じゃあ四人でやろうか!」
「な、何を?」
『今日の晩飯、お前たちが作れ。って』
「ははは」
リュウも頭数に入ってたのか、とリュウの顔を見れば全力と横に振る姿にクレアは仲間が出来たとばかりに喜んだが、出来ないと断られてしまった。と同時に薬室長に、助手として連れて行かれてしまった。
「まぁ、何はともあれやりますかね」
「だね!」
『…こんなに作るの?』
場所を移動して厨房の一角を少し借りて、目の前の食材の多さにクレアはこれを全て調理するのかと、目眩を起こしそうであった。その様子に白雪が大丈夫ですよ、と声を掛けてくれるので、頑張ると気合を入れる事にする。
「第二王子伝令役オビと――」
『え、何それ言わなきゃいけないの?…同じく側近クレア…』
「宮廷薬剤師白雪の」
…二人はどこかやる気ではあるが、この掛け声は必要なのだろうか。
「王城ウィスタル大晩餐会料理〜〜〜〜」
主にやる気ありげなのは、拳を高く上げている彼だけなのだが、とりあえず、城の料理人からの好意で貸してもらったエプロンを後ろ手に結びつつ、指示を待つことにする。
「私、酒場料理しか作れないよ?」
「いーのいーの。むしろ好物」
『…あたしは…』
出来ない、と続ける前にオビの手がそっと頭に乗せられ、優しく撫でられたかと思えば、さっと流しに行って手を洗いに行ってしまった。すぐに戻ってくると、作業台に置かれた食材の中から赤々としたトマトを迷いなく一つ掴んでまな板に置き、包丁で軽やかにリズムよく輪切りに切られていく。
「どうだい?」
『トマトが踊ってるように見えた』
「はは、褒めすぎ。クレア嬢でも簡単にできるようになるって、コツさえ掴めばね」
同じく横でそれを見ていた、白雪も思わず、おぉ…と目を見開く姿にオビは、いやいやお嬢さんも驚いてるのおかしくないかい?と笑う。
「とは言え、これをいきなりやるのは流石に無理だから、包丁の持ち方から教えるよ」
『ん、お願い』
「クレアさん、まず手洗いに行きましょう」
そうだね、と頷いて白雪と手を洗ってから戻ると先程の場所にはまな板に乗せられたトマトと包丁が置いてあり、クレアは静かに息を呑んだ。
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ありす(プロフ) - 何度も読み返してるのが私だけじゃなくてよかったです!久しぶりに読み返しにきました!ずっと更新続いてるのが嬉しいです!!ありがとうございます:)♡ (2022年8月31日 14時) (レス) @page45 id: 331930e50a (このIDを非表示/違反報告)
☆(プロフ) - 最近この小説を知り、一気読みしてしまいました…!素敵な物語をありがとうございます🙇♀️お忙しいと思いますが、いつかふと思い出して更新して頂けたりすると嬉し泣きます😌 (2022年8月6日 18時) (レス) id: f76d03d4ec (このIDを非表示/違反報告)
りんごにゃん - 何度も読まさせてもらってます!!更新嬉しいです!!ずっと楽しみにしてましたー!!新刊も出て更新大変だと思いますが、頑張って下さい!続きの更新たっても楽しみにしてます!主人公とオビの絡みが特に好きです!また4人との絡みもとても自然で読むのが楽しいです! (2021年6月8日 23時) (レス) id: b4b1143c3c (このIDを非表示/違反報告)
ぺこぱ(プロフ) - この作品に出会えて良かったです!!お忙しいとは思いますが更新お待ちしています。がんばってください!! (2020年9月15日 14時) (レス) id: 7095aaaef1 (このIDを非表示/違反報告)
はまゆ。(プロフ) - 何周目かわからないですが見返しました!いつ読んでもとても素敵なお話です。応援してます。 (2020年5月25日 3時) (レス) id: a7b82f401c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クレア | 作成日時:2016年2月8日 1時