〜居場所(5)〜 ページ31
白雪と並んで歩きながら、空が茜色に染まるのを横目に部屋の前まで来れば、部屋前に立つ衛兵達がこちらを見て少し頭を下げる。
「お疲れ様です、白雪どの!今し方ーー」
そう聞けば、白雪はクレアをちらりと見る。
『行っておいで』
「はい、また夜に」
その笑顔は、恋をする女の子そのものでクレアは、そんな白雪の姿を見て、可愛いなほんと。と肩をすぼめた。
「クレア様も、おかえりなさい」
『ただいまです。でも白雪をここまで送り届けに来ただけなんで。殿下と会えたようなので、また少し部屋を空けます。夜には戻ると思うので』
「はっ、了解しました」
衛兵達に背を向けて、廊下を歩き進め城の庭へと出れば目の前に影が落ちる。
「お疲れ様、クレア嬢」
『オビもお疲れ様。あの後も、ゼンと一緒に資料室に戻ったんでしょ?』
「まぁね。ま、あの後だから水を打ったような…感じだったよ」
『ゼンは、白雪が言ってなくても声にしてたろうね』
結果的には、白雪の行動であの場は静まったが、それに拍車をかけるようにゼンの一声である。静まり返るのも無理はないか。とクレア。
「お嬢さんが何も言えなかったとしたとしても、先に俺らが出てたでしょうが。クレア嬢は、どっちにせよ何らかのアクション起こすと思ってたしね」
というか、そこそこ噂になってたからね。言い訳なんてせんでいい、って主に言われたからしなかったけど。と苦笑するオビに、へぇー、なんて?と口を緩めた。
「殿下の側近は、所構わず逢い引きをしてる。だとか」
『逢い引きねぇ…まぁあたしが、吹っ掛けたの聞いてたらそうもなるって』
「だけど、あのザクラって人はそうは思ってなかったみたいだけどね」
長い付き合いだからね、ザクラ殿とは。…あれ、それじゃあ、あの時もいたってこと?と少し焦り顔のクレアにオビが居たみたいだね。と笑った。
『…まぁ、ゼンがいいって言ったし、これからどうする?』
「少しだけ城下にでも行くかい?って言っても、夜には戻らないといけないけどね」
『あたしも部屋の衛兵達に、夜には戻るって言ってるから丁度いいよ』
なら、決まりだね。とオビ。
「最近、いい店が出来たみたいだからエスコートしますよ、クレア嬢」
『ふふ、それは楽しみかも』
行きますか、とばかりに右腕を差し出すオビに、クレアはその腕に自分の左腕を絡ませると、城下へと仲良く降りていく姿を夕日が照らしていた。
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ありす(プロフ) - 何度も読み返してるのが私だけじゃなくてよかったです!久しぶりに読み返しにきました!ずっと更新続いてるのが嬉しいです!!ありがとうございます:)♡ (2022年8月31日 14時) (レス) @page45 id: 331930e50a (このIDを非表示/違反報告)
☆(プロフ) - 最近この小説を知り、一気読みしてしまいました…!素敵な物語をありがとうございます🙇♀️お忙しいと思いますが、いつかふと思い出して更新して頂けたりすると嬉し泣きます😌 (2022年8月6日 18時) (レス) id: f76d03d4ec (このIDを非表示/違反報告)
りんごにゃん - 何度も読まさせてもらってます!!更新嬉しいです!!ずっと楽しみにしてましたー!!新刊も出て更新大変だと思いますが、頑張って下さい!続きの更新たっても楽しみにしてます!主人公とオビの絡みが特に好きです!また4人との絡みもとても自然で読むのが楽しいです! (2021年6月8日 23時) (レス) id: b4b1143c3c (このIDを非表示/違反報告)
ぺこぱ(プロフ) - この作品に出会えて良かったです!!お忙しいとは思いますが更新お待ちしています。がんばってください!! (2020年9月15日 14時) (レス) id: 7095aaaef1 (このIDを非表示/違反報告)
はまゆ。(プロフ) - 何周目かわからないですが見返しました!いつ読んでもとても素敵なお話です。応援してます。 (2020年5月25日 3時) (レス) id: a7b82f401c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クレア | 作成日時:2016年2月8日 1時