〜居場所(2)〜 ページ28
「…あれ?」
オビの声に反応したゼンと白雪が振り返ると、ユウハに詰め寄るクレアの後ろ姿に、彼らも嫌な予感が拭えないがあえて止めないのは、相手がユウハだからである。
「ど、どうかされましたでしょうかク、クレア殿」
『えぇ、先程の御誘いに乗らせて頂こうかと思いまして』
どもるユウハと裏腹に、クレアは満面の笑みでユウハの懐へとすっと入り込めば、腕をゆっくりと絡ませる。
「!…何の話か全く…」
『今宵、ユウハ殿の寝台でお待ちしておこうかと。それとも私の部屋にいらっしゃられますか?』
「…っ…ご冗談を」
意図がわかったようで、クレアから離れようと身を捩るも、こんな細腕のどこからそんな力があるのかと思う位の力で掴まれ、身動きができないユウハの耳にクレアが小さく笑う声が入る。
『そんな邪険になさらないでくださいユウハ殿。御用があれば寝台に腰掛けていろと申されたのは他でもない、ユウハ殿ではありませんか』
「………」
『____…______?…では、失礼しました。』
ぐうの音も出ない様子のユウハに、止めとばかりにクレアは彼の耳にそっと口を寄せる。その姿はオビ達から見れば口付けをしているかのようにも見えたが、すっと離れた時に垣間見えたユウハの表情で、そうではない事ははっきりしていた。
踵を返して颯爽とこちらへと戻ってくるクレアに、オビは、ははは、やっちゃったねーと笑えば、白雪が少し慌てた様子でクレアを見ている。
『謝らないからね、ゼン』
「…まだ何にも言ってないだろうが」
『先に言っておこうかなって』
全く悪びれない態度のクレアに、いつもの事だとゼンは鼻で笑ってから歩みを進める。
「て言うか、主、聞いてたんですね」
「まあな。おまえが咬みつきやしないか、ひやひやしたが危険分子を一人忘れていたわ」
「やだなこんな紳士つかまえて。っていうか、主、そんな事言ってますけど、分かってたんでしょ?」
オビがゼンの横に並んで歩くので、クレアはその後ろを歩き白雪と歩幅を合わせて歩く。
『ゼンもだいぶ頭にきてたからねー、あたしが変わりに少しやり返してやったから、許してやってよ白雪』
「あ、はい。……って、私の為に何だかすいませんクレアさん」
『いーのいーの。あたしも腹立ったし!』
と、にんまり笑うクレアにそう言えば、最後に何て言ったんだ?とゼンが歩きながら少し後ろへと振り返った。
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ありす(プロフ) - 何度も読み返してるのが私だけじゃなくてよかったです!久しぶりに読み返しにきました!ずっと更新続いてるのが嬉しいです!!ありがとうございます:)♡ (2022年8月31日 14時) (レス) @page45 id: 331930e50a (このIDを非表示/違反報告)
☆(プロフ) - 最近この小説を知り、一気読みしてしまいました…!素敵な物語をありがとうございます🙇♀️お忙しいと思いますが、いつかふと思い出して更新して頂けたりすると嬉し泣きます😌 (2022年8月6日 18時) (レス) id: f76d03d4ec (このIDを非表示/違反報告)
りんごにゃん - 何度も読まさせてもらってます!!更新嬉しいです!!ずっと楽しみにしてましたー!!新刊も出て更新大変だと思いますが、頑張って下さい!続きの更新たっても楽しみにしてます!主人公とオビの絡みが特に好きです!また4人との絡みもとても自然で読むのが楽しいです! (2021年6月8日 23時) (レス) id: b4b1143c3c (このIDを非表示/違反報告)
ぺこぱ(プロフ) - この作品に出会えて良かったです!!お忙しいとは思いますが更新お待ちしています。がんばってください!! (2020年9月15日 14時) (レス) id: 7095aaaef1 (このIDを非表示/違反報告)
はまゆ。(プロフ) - 何周目かわからないですが見返しました!いつ読んでもとても素敵なお話です。応援してます。 (2020年5月25日 3時) (レス) id: a7b82f401c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クレア | 作成日時:2016年2月8日 1時