〜偽装見合い(13)〜 ページ17
ゼン達を探すのに、差ほど時間はかからなかった。やはり先程の部屋から比較的近い場所に来ていたようで、ミツヒデと木々の姿をすぐに見つける事ができた。
「お前達、主人はどうした?」
「!」
「イザナ殿下」
驚いたミツヒデの視線を追えば、イザナはゼンの居場所を特定した。
「ーーああ、向こうか」
「お呼びしますか」
「いや、いい」
自分が行くと、告げたイザナは歩みを一度止めてからミツヒデへと振り返る。
「…あれは次は、ミツヒデと見合いでもする気か?」
「………はっ…」
「ははは。まあ、木々の名を外さなかったのは俺だがな。」
ミツヒデと木々と合流出来た所で、クレアは歩みを止めその場で待つつもりでいたが、イザナがこちらをちらりと見たので、クレアも黙ってイザナの後ろをついていく。
「………」
『………』
自分へと降り注ぐ視線に、ふと近くの木へと目を向ければオビがこちらを見ていて目が合えば、へらっとした笑みで手を振っていた。
どうやら、執務室に書き置きしていたメモは意味がなかったようで彼は、先にゼン達を見つけていたようだ。
「ゼン」
近くの壁に登り、空を見上げていたゼンは兄の問い掛けに、壁から飛び下り同じ目線へと立つ。
「お前は甘えてもこないで、先手を打つとは可愛くないな。お前の申し出の返答をしよう」
そういって両手を組むイザナに、ゼンは目を見開く。
「ゼン、お前に王宮の東の一角をやる。そこに王城付薬剤師、白雪の部屋を置く事を許そう」
後ろでそれを聞いていたクレアも、同じく目を見開いたのは言うまでもない。
「但し、側近達の部屋も同じ様にしろ。…お前は奥から移してくれるなよ」
「ミツヒデ達も…?」
「お前の側に仕える者と同じ場に身を置かせる。明白とはそういう事だ」
イザナはゼンの手に、東の一角にある部屋の鍵を手渡すのを見て、クレアは小さな声で息を吐いた。
それは安堵によるものか、白雪の今後の心労を考えてのどちらとも取れる、溜め息であった。
「…兄上!」
鍵を渡し終えたイザナは、それ以上、用はないようでゼンに背を向け歩き始めるが、ゼンに呼ばれると体を少しだけ振り返らせた。
「不相応なものは与えない」
「感謝致します」
それは、イザナが白雪を認めたと同時に、ゼンと白雪の関係を認めたと言ってるようでもあった。
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ありす(プロフ) - 何度も読み返してるのが私だけじゃなくてよかったです!久しぶりに読み返しにきました!ずっと更新続いてるのが嬉しいです!!ありがとうございます:)♡ (2022年8月31日 14時) (レス) @page45 id: 331930e50a (このIDを非表示/違反報告)
☆(プロフ) - 最近この小説を知り、一気読みしてしまいました…!素敵な物語をありがとうございます🙇♀️お忙しいと思いますが、いつかふと思い出して更新して頂けたりすると嬉し泣きます😌 (2022年8月6日 18時) (レス) id: f76d03d4ec (このIDを非表示/違反報告)
りんごにゃん - 何度も読まさせてもらってます!!更新嬉しいです!!ずっと楽しみにしてましたー!!新刊も出て更新大変だと思いますが、頑張って下さい!続きの更新たっても楽しみにしてます!主人公とオビの絡みが特に好きです!また4人との絡みもとても自然で読むのが楽しいです! (2021年6月8日 23時) (レス) id: b4b1143c3c (このIDを非表示/違反報告)
ぺこぱ(プロフ) - この作品に出会えて良かったです!!お忙しいとは思いますが更新お待ちしています。がんばってください!! (2020年9月15日 14時) (レス) id: 7095aaaef1 (このIDを非表示/違反報告)
はまゆ。(プロフ) - 何周目かわからないですが見返しました!いつ読んでもとても素敵なお話です。応援してます。 (2020年5月25日 3時) (レス) id: a7b82f401c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クレア | 作成日時:2016年2月8日 1時