〜偽装見合い(7)〜 ページ11
「前から少し考えている事があってな……と」
「何」
急に話を止め自分を見つめるゼンに短く何かと問えば、ああ、すまんと言葉を続ける。
「いや、その前に。芝居と言えば木々…セイランどのにも一芝居うったのか?」
「父上?何の話。」
全く心当たりのないのだろう木々は、そのままゼンの次の言葉を待つ。
「あーーー…この前の…なんだ。俺と木々がミツヒデを怒らせた件、二人がどう納めたのかミツヒデに聞けって言ってたろ」
「ああ…」
「それで顛末を聞いたんだが」
これを言ってもいいのだろうかと、一瞬戸惑いがあったものの聞かずにはどうも胸の内がすっきりしないゼンは口を開く。
「(いざとなったら自分が求婚する)って誰とは明かさず宣言したって?」
「…どこまでこと細かな顛末なんだか」
小さく息を吐く木々の姿に、やはり聞かない方が良かったかと後悔するも、ここまで聞いてしまってやはり言わなくていいとは言えずに話を進める。
「いや、ほとんどはざっくりだったんだけどな。………訊いていいか」
「ミツヒデだよ」
間髪入れずにそう返す木々の横顔は、いつも以上に凛々しく、そしてその名前に目を見開いた。
「…………全く予想外の名前だったわけ」
「…………いや、いくらなんでもそれはないが…検討つけかねて話してるミツヒデに呆れてたくらいだからな、俺も…。ミツヒデではないとでも言われたのか、こいつと思ったわ…」
その話の中の人物に、思わず視線が行ってしまったゼンにずっと立っているのが暇になったのか眠気眼のオビが、今にも閉じてしまいそうなその細い目を一層、細めた。
「ん?」
「なんか見てるな」
『もう終わりかもよ、行ってみる?』
オビもこの状態じゃあ、立ってでも寝そうだしねと肘でつつくクレアに、ちゃんと起きてるって。と、欠伸を噛み殺すオビ。
「御用ですかね」
「さあな、まぁ行ってみるか」
『だね』
こちらへと歩みを進めてくるのを見てから、ゼンは近くの石段に腰を掛けてから深く息を吐いた。
「ーあいつは…昔から時々、同情するくらい抜けてるが木々の背中を他の誰かに守らせるなんて考えもしてないくらいには、ちゃんと図々しいと思うぞ」
座るのに少し邪魔な剣を腰から鞘ごと引き抜いて、左手で立たせるように持つ。
「それは助かる」
木々は、一度ゼンを見てからそっと静かに目を伏せたのだった。
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ありす(プロフ) - 何度も読み返してるのが私だけじゃなくてよかったです!久しぶりに読み返しにきました!ずっと更新続いてるのが嬉しいです!!ありがとうございます:)♡ (2022年8月31日 14時) (レス) @page45 id: 331930e50a (このIDを非表示/違反報告)
☆(プロフ) - 最近この小説を知り、一気読みしてしまいました…!素敵な物語をありがとうございます🙇♀️お忙しいと思いますが、いつかふと思い出して更新して頂けたりすると嬉し泣きます😌 (2022年8月6日 18時) (レス) id: f76d03d4ec (このIDを非表示/違反報告)
りんごにゃん - 何度も読まさせてもらってます!!更新嬉しいです!!ずっと楽しみにしてましたー!!新刊も出て更新大変だと思いますが、頑張って下さい!続きの更新たっても楽しみにしてます!主人公とオビの絡みが特に好きです!また4人との絡みもとても自然で読むのが楽しいです! (2021年6月8日 23時) (レス) id: b4b1143c3c (このIDを非表示/違反報告)
ぺこぱ(プロフ) - この作品に出会えて良かったです!!お忙しいとは思いますが更新お待ちしています。がんばってください!! (2020年9月15日 14時) (レス) id: 7095aaaef1 (このIDを非表示/違反報告)
はまゆ。(プロフ) - 何周目かわからないですが見返しました!いつ読んでもとても素敵なお話です。応援してます。 (2020年5月25日 3時) (レス) id: a7b82f401c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クレア | 作成日時:2016年2月8日 1時