心の欠片。‐4【短編集】 (ページ6)

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背中をさすり、そっと見守る。

アベくんは、「ありがとうございます」と小さな声で言う。

まだ顔色は良くないが、呼吸音は正常に近くなったように思った。

「僕、季節の変わり目とか、体調を崩しやすくて」

アベくんは呼吸器系の持病があり、あまり体が強くないと、言っていた。

学校の帰りに立ち寄る、花屋を楽しみに、一日頑張れるんです、と言ってくれた。

『ずっと、待ってます』

「はい、ありがとうございます」

それから6日後のこと。

いつものように学校から帰り、店の手伝いをしていたら。

「お久しぶりです」

『いつもありがとうございます、お待ちしてましたよ』

アベくんはいつもの笑顔で、お店に来てくれた。

帰ってからすぐに包んだ、一輪のすずらんを手渡した。

「ありがとうございます、いつも癒されてます」

『こちらこそ、いつもありがとうございます』

あの時の涙。

涙は、終わりの合図じゃない。

一歩踏み出すための、大事なもの。

『明日もお待ちしてます』

「はい、また来させていただきますね」

またこの言葉を、交わせることを願って。

fin.

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