心の欠片。‐4【短編集】 (ページ22)

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阿部くんも電車で帰ると知り、徒歩数分の道を歩く。

駅に近づいていくにつれて、だんだんと、彼は喋らなくなった。

よく見れば、息を苦しそうに吐いていた。

『阿部くん、大丈夫？』

「……ごめん、大丈夫、」

そう言いながらも、足元はかなりふらついていて。

駅に着く頃には、もう、立てないぐらいになっていた。

幸い、最終便まではまだ時間があった。

帰宅ラッシュの時間だからか、駅は人がたくさん。

阿部くんは息が苦しそうなまま、立ち上がることもできず。

「…ごめん」と繰り返す度に、心が痛んだ。

どうにか最終便に乗り込み、阿部くんの体を支えながら。

やっとの思いで、駅に着いて。

着いてもなお、体に力が入らないみたいで。

家が近くだと彼から聞いて、そこまで一緒に行くことにした。

『…本当に大丈夫？』

「……うん、昔は特に、」

何かを言いかけて、そのまま黙ってしまった。

「…ありがとう、家まで、」

『ううん、』

阿部くんはありがとう、と言い、彼の家の前で別れた。

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