心の欠片。‐2【短編集】 (ページ29)

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数日後、彼の面会に行った時。

彼は目を覚ましていて、口を開いた。

「もうこの光景は見られないと思ってたのに」という、ひと言。

その言葉が示していたのは、彼はなにか事故に遭ったわけではない、ということ。

自ら、この世界から居なくなろうとしていた、ということ。

自分でそうではないかと考えていたはずなのに。

いざそれが現実となると、途轍もなく怖かった。

目に光のない彼にかける言葉なんて、あの時なにも言えなかった俺がかけられる言葉なんて。

あまりにも俺は、無責任すぎた。

「舘さんはどう思ってるの、あれは本当だって思ってるんでしょ？」

『……そんなこと、思うはずがない』

「嘘だ、舘さんだってあれが本当だって、思ってるんでしょ？」

彼は興奮状態になっていて、強引に彼に腕を掴まれた。

でも、彼の苦しみに比べれば。

「だったら言ってよ、あんなの“嘘だ！”って、知ってくれてるなら、そう言ってよ」

彼は無表情で涙を流した。

あまりにも俺は、無責任すぎた。

『あんなの噓だ、阿部がそんなこと言うはずがない！』

「……舘さん、」

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